August 2014

August 31, 2014

幻聴妄想はこの世界の豊穣    アーツ千代田3331「シリーズ存在と生活のアート 新・幻聴妄想かるたとハーモニー展」



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  【ら】ジオから自分のことが言われている
  【へ】リコプターとジェット機はアメリカ軍諜報機関 監視されている…
  【と】つ然雨が降ってきて そしたら 周りの町が消えていった
  【こ】ンビニに入るとみんな友達だった

 およそ5年前、Eテレで初めて知った「幻聴妄想かるた」。そこに詠まれていたのは、「世田谷 就労継続支援B型事業所 ハーモニー」に通所する皆さんの体験でした。

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 最初はそのめくるめく世界におかしみをもって驚いたのですが、思えば亡き父はそうした世界を体験していたと思うのです。内臓が溶け出しても医者にかかることを拒否し、最期は入院数日で息を引き取った父。自分が小学生のころから妄想癖(いま思えば)がありました。「自分が速度超過で捕まったのは、母が警察に連絡したからだ」と本気でいう人でした。母が隣の座席に乗っていたのに。こうした事例を挙げれば枚挙に暇がありません。頑なな姿勢も、ほかに根深い理由があったにせよ精神的な問題もあったはず。しかし、どうしもないことでした。

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 きょう、アーツ千代田3331(東京・外神田)で残り9月5、6、7日に開催される「シリーズ存在と生活のアート 新・幻聴妄想かるたとハーモニー展」にお邪魔しました。偶然にも、前回同館にお邪魔したのは2011年夏、初めて見る写真家・齋藤陽道さんの個展でした(前夜にCXの「NONFIX」という番組で齋藤さんを知り)。そして齋藤さんのライフワークの被写体として、ハーモニーの皆さんがいて、きょうの会場にも齋藤さんの作品が展示されていました。自分が実際に「新・幻聴妄想かるた」を入手したのも、齋藤さんが展覧会を開いたワタリウム美術館でした。つながっている。

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 そしてたまたまきょう、15時半くらいに会場にいって展示を見て、Eテレで最初に知った前の「かるた」を手に入れることができ、ほんとうにうれしかったと思ったら、なんと18時から齋藤さんが「かるた大会」の読み手として来場されるということで、せっかくなのでご挨拶することに。会場には、似顔絵とその方が詠んだかるた、ある方の部屋の再現、齋藤さんの写真、実際にハーモニーの会合で書き出された話し合いの内容がそのままのホワイトボードなどが展示され、その世界の広がりと、温かいみなさんの思いが伝わってきてほんとうに心地よかったです。

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 いったん外神田を散歩して妻恋神社さまに参拝。会場に戻ると齋藤さんがいらしていてご挨拶し、かるた大会の冒頭では自分がTVで見たVTRが流され、懐かしく見ましたら、ほかの皆さんも映し出される数年前の自分たちの若い姿に感動されていました。19時に新宿で待ち合わせがあったのでかるた大会冒頭で帰りましたが、ほんとうに一般参加者の皆さんも楽しそうでした。

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 父はこうした場所に縁がありませんでしたが(社会人としては仕事をしっかり定年、その後までしていましたから)、苦しみを分かち合うこうした場があるのはなによりだと考えます。そして皆さんが体験する世界は、間違いなくこの世界の断面であり、この世界の豊かな一面でもあると思えてならないのです。また、ハーモニーさんは自宅から自転車で十数分でいける場所。一度実際にお邪魔してみたいです。

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天網恢恢疎にして漏らさず――盲導犬を虐待した者たちへ



 自分にとって盲導犬(ひいては介助犬)は不可侵の存在です。崇敬の対象です。自分は盲導犬ほどに社会に貢献しているかと言うと、まったくしていません。ただただ、自分のやりたいことだけを追求して生きています。ですから、盲導犬がかわいいという以前に、不可侵なのです。

 そんな自分にとっての盲導犬に「お仕事中」に話しかけたりするなどできることではなく、もし近くにいられたのなら熱いまなざしで見守るのみです。いわんや、盲導犬を刺したり、たばこの火を押し当てたり、いたずら描きをしたりするなど、もうほんとうに想像も及ばないことでした。
 
 なんというか、怒りでめまいがすることってほんとうにあるんですね。胃が痛くなるし、義憤で涙ってでるんですね。そういうことをする人たちが、ある種の病であり、そうした人たちなりの地獄を生きているのだと思います。それこそ、自分には想像もつかないような修羅を抱えながら生きているのでしょう。

 しかし。そうしたあるべき配慮を一切に抜きにして書かせてもらうなら、オスカーを刺した奴は建設資材が身体に刺さって死ねばいいし、たばこの火を押し付けたやつは生きたまま焼かれて死ねばいいし、顔にいたずら描きをしたやつは、その人物の価値観において見られたものでない傷を顔に負えばいいのです。天網恢恢疎にして漏らさず。





August 28, 2014

平成ガメラにみる今日性――核燃サイクル、集団的自衛権



 よくあることですが、DVD-BOXをもっているのにNHKBSプレミアで放送された金子修介監督、伊藤和典脚本、樋口真嗣特技監督、大谷幸音楽の「平成ガメラ3部作」を録画して観てしまいました。ほんとうに息をのむ展開で何回観てもおもしろい。同時に、やはり今の自分だからこそ気付けるなにかがある。それが傑作の傑作たるゆえんです。

平成ガメラ Blu-ray BOX
伊原剛志
角川エンタテインメント
2009-08-28



 2点、この作品で重要な今日性を強く感じました。もちろんこの作品が空中決戦における描写の素晴らしさは当時、盛んに作られていた駄作のゴジラシリーズにも多大な影響を与えました。しかし結局、同シリーズは北村龍平監督の「ファイナル・ウォーズ」という傑作を残して終わることになります。平成ガメラシリーズは日本の怪獣SF映画に燦然と輝く三ツ星なのです。

 まず、第1作冒頭が再処理されたプルトニウムを海上輸送する船のシーンからはじまるように、核、とくに核燃サイクルの問題へことあるごとに言及がなされます。プルトニウムの半減期の途方もない長さ、そして強力な毒性。ガメラとギャオスが過去文明の遺物であることと重ね合わせて描かれ、説教臭くなくその「未来への無責任さ」が強調されるのです。

 そして2点目。本作には自衛隊が全面協力しているように自衛隊とガメラ、ギャオス、レギオン、イリスの戦闘も見所となっています。そうした展開で一番焦点になるのがガメラを人間の味方として捉えるか、害する怪獣と捉えるかで方針が180度変わるのです。ガメラが初登場し、福岡市を破壊しながらギャオスに向かう際、自衛隊は憲法9条のしばりでガメラを攻撃できません。それがもどかしくも描かれます。

 しかし、結果的にそれが正解だったと分かるときがやって来るのです。閣議決定により、なんどガメラは自衛隊によって攻撃され、ギャオスたちとの戦いを邪魔されることか。そう、人間の認識力など、ガメラの行動が対「地球・人類の敵」であっても攻撃してしまうようにたかが知れているのです。つまり、米軍のいいなりで集団的自衛権の名の下に「敵」を攻撃した場合、それが本当の「敵」かなど分からないのではないでしょうか。

 自衛隊の戦力がガメラを凌駕していなかったからよかったものの、ガメラを傷つけ、窮地に追い込んでいたら人間は自ら助かる可能性を捨てることになるのです。いかに武力行使が難しいか。あの安倍晋三総理大臣の思考力で判断できるものではありません。誰が総理になっても難しい判断です。このように平成ガメラは今日性ある作品として見直しがなされるべきです。ハリウッド版ゴジラなど無意味だと気付くでしょう。




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August 25, 2014

心血注がれたステージに感涙とまらず   NU'EST JAPAN TOUR 2014 最終日



 ステージが始まってまだ数分だったと思います。その“美しさ”に、涙が溢れていました。舞浜アンフィシアターに登場したNU'EST(ニュイストゥ)のメンバーたち。その登場シーンも凝っていて、さらに楽曲が始まると同時に見事な歌唱、スタイリッシュなダンス、曲ごとに物語性をもった立体的な振り付け、そして個性豊かな美しき天の造形物たる彼ら自身の存在感。昨年12月に参加したZEPP TOKYOのステージから、1年もたたずに何倍も成長した彼らであることが一見して胸に、頭に響いたのでした。全21曲。

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 この土日で1泊2日の山形旅行の翌日のきょう、正直、ステージが始まるまでどこか億劫だったのです。というのも、この3カ月で舞浜アンフィシアターに足を運ぶのは3度目で、前の2組のステージがいまいちだったのです。もちろん昨年のNU'ESTのステージは素晴らしかったのですが、どこかゆらぐものがあったのです。ところがです。開幕と同時に彼らの世界に引き込まれ、たっぷり2時間、ステージを満喫したのでした。ほんとうに何度、感嘆したことか。





 NU'ESTの楽曲や歌唱が優れ、ダンスが特徴的なのもわかっていました。しかし今回の、冒頭の部分はシリアスで押しまくり、トークに逃げない連続のパフォーマンスに圧倒されました。衣装も黒で始まり、最後は白で終わるという流れ。またシリアスとコミカルのバランスが絶妙で、しっかりパフォーマンスを聴かせてから、トークやメンバーへの手紙コーナーに移るのはすごい、と思いました。ときどき他公演で手紙を読んで泣いている姿に引き気味ですが、今回のリーダーが読む手紙は、それまで観てきたパフォーマンスの完璧さを考えると大いにうなずけ、意義ある瞬間だったと強く感じます。

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 11月に発売される日本公式デビュー後初シングル「Shalala Ring」も素敵な曲で、「ヨボセヨ」と併せNU'ESTの冬の楽曲としてこれから歌い継がれていくでしょう。また今回、男性ファンが非常に多かったのも心強かったです。男性ファンが増えるのはファン層の裾野の広がりの表れであり、楽曲などの訴求が幅広いことを意味します。甘いだけじゃない、センシティブで、洗練され、スタイリッシュな彼らの熱い、熱いパフォーマンスは性差を超えて魅力的に感じられる。こうしたつくり込まれたステージには相当の、心血注いだ総合力がなければできません。心からパクス(拍手)!

NU’EST 2nd Anniversary Live SHOWTIME2 [DVD]
NU’EST
(株)ソニー・ミュージックレーベルズ
2014-09-24





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August 21, 2014

潮目を迎えた安倍自公政権――眼中になき国民生命・生活



 広島市の安佐北区・安佐南区の土砂災害の被害は、時間の経過と共にその人的被害の大きさが明らかになってきています。地震被害と同じで、半日やそこらで被害の実態がつかめないことは、あの規模の被害からは容易に想像がつきます。 政策の云々以前の問題です。

 しかしきのう、安倍総理は災害が起きていることを知りながらもゴルフコースをまわり始めたばかりでなく、官邸に帰って「情報収集」を数時間したのち、ふたたび2時間かけて山梨県の別荘に戻ったと知ったときは、ただただ驚きました。ありえないことだと思いました。

 天皇陛下が今夏の軽井沢での静養を見送るという一報を知ったしばらくして、安倍総理が別荘をあとにして再び東京に戻ってくるとのニュース。ここに、今上陛下と安倍総理の、国民への立ち居地が如実にあらわれています。もはや安倍総理の言い訳に国民は耳を貸さないでしょう。

 安倍総理にとって国民は、監視対象であり、憲法解釈のためにだます厄介者であり、税金を搾取して大企業に注ぎ込む源泉でしかありません。広島の平和宣言が去年のコピペと批判されようと、同じことを長崎でやってのけられる人間なのです。総理の、否、政治家の資格なしです。

 「今夜は別荘に帰るべきでない」と諫言できるブレーンもいない。まさに裸の王様です。菅官房長官や古屋防災担当大臣(なにが防災か!)ら、ふつうだったら要職に就く器でない人間で周囲を固め、見たいものだけ見る総理大臣。山口公明代表も総理を擁護… 今が安倍政権の潮目です。




reversible_cogit at 22:23|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)政治経済 | 新聞

August 19, 2014

物語る音楽  「武久源造バッハシリーズ@近江楽堂 vol.3」



 今夜、開演2分前に近江楽堂(東京オペラシティ内)に滑り込み、「武久源造バッハシリーズ vol.3」を聴くことができました。演奏はジルバーマン・ピアノ(フォルテピアノ)を武久さん、ヴィオラ・ダ・ガンバを英国王立音楽院教授、市瀬礼子さん。バッハのガンバ・ソナタをチェンバロでなくフォルテピアノで演奏するのは恐らく本邦初とのこと。確かに聴いたこともうわさも知らない。同シリーズは前回に続き2度目です。

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次回は12月10日

 曲目はバッハのガンバ・ソナタの第1、2、3番と、バッハの末息子、ヨハン・クリスティアン・バッハのガンバ・ソナタ第4番。前半に父の1、2番、後半に息子4番、父3番という順番で演奏されました。1番は正直、ピアノはあってないなぁ、と感じずにはいられませんでした。チェンバロ演奏で聴きすぎていますから。なんかやぼったく聞こえるんですよね。なので、これは大丈夫かなぁ…と思ったのです。

 ところが2番の演奏になると、もはやチェンバロ演奏とは別物の素晴らしい響き。もちろんお2人の演奏がスペシアルなのはそうなのですが、えもいわれない気品と優しさが演奏からあふれ出し、もうほとんど夢見心地でした。素晴らしかった。これで一気にと思いきや一転、後半の息子の曲は、クズでした。クリスチャン・バッハは当時ロンドンで大成功し大もうけ。幼少期のモーツァルトにも手ほどきした流行作曲家でした。


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武久さんの愛器

 そう、流行作曲家によくあることですが、当時の前古典というか、ロココ調というか、もうどこにもでもありそうな曲なのです。以前から彼の曲に対して抱いていたもやもやが一気に言葉になった瞬間でした。確かに整って楽しい曲なのですが、いま聴くと全然楽しくない。否、酒でもいっぱいひっかけて食事しながら聴くにはいい。しかし、演奏会で聴くぞ聴く曲じゃない。どんなに演奏が素晴らしくてもだめなものはだめなんです。
 
 と、いったんかなり盛り下がったあとに父3番の演奏が…。もう、涙が自然と溢れ出しました。さっきがマイナス20ならいきなりプラス120に振れた感じです。劇的な第1楽章を聴いていると、日常のなにげなくもつらい一場面一場面が思い出され、それは俯瞰すれば取るに足らないことだけど、やはりその本人には重大なことなんだよ、とわかってくれているようでした。1楽章の中にさまざまな物語が凝縮されているようのです。


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市瀬さんの楽譜

 あぁ。やはりJ・S・バッハは偉大です。唯一無二です。自分にとってなにをもってしても揺るがない存在。キリスト教の神は信じませんが、たとえるなら個人的八百万の神様たちのかなり上にいる方だと感じてなりません。同時に武久さんのたゆまぬ試み、市瀬さんのさばさばと温かく洗練された演奏に、心から浸ることができました。感謝でいっぱいです。


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August 17, 2014

イノリのカタチ  多摩美術大学美術館「東北のオカザリ―神宿りの紙飾り―」



 きょう初めて、多摩美術大学美術館へ。校舎とは別に京王・小田急多摩センターの商業区にあってベネッセコーポレーション東京本部とサンリオ・ピューロランドのあいだに立地し至便。個人的にも地元・明大前から特急1本でいけるのでとても楽でした。そして食べログで見つけた駅前のカリヨン館7階にある「蕎麦酒房 十割そば 鬼や」のおそばとかき揚げ丼が思いのほかおいしかったです。

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駅から近い


 目的は同館で来月15日まで開催、「東北のオカザリ―神宿りの紙飾り―」展です。和紙を神職が神々を中心とした意匠のかたちにかたどり、日常生活から祭祀の場で飾り付けられるのです。千葉惣次氏らのコレクションが会場いっぱいに展示され、東北の人々がいかに神々を捉え、慈しみ、信仰しているかがひしひしと伝わり、心震えるものがありました。祈りのかたち。

 お稲荷様は狐のかわいらしさを、水神様は不思議さを、カマドの神様はいかしさをたたえ、こうした神々に見守られていることを感じながら生活できるなんて、ほんとうに心強くも一本芯が必用なことと考えます。神々の視線を感じなくなったとき、あるいは忘れるとき、人は自然を破壊し、人間性を踏みにじるのでしょう。今の日本に足りないのは、八百万の神々と生きている実感です。

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ポスターを無料で頂けました(1日15枚限定)

 ほか会場では宮城県登米市の上町法印神楽が映像で流され、たまたま自分は「産屋」「初矢」を見たのですがとりわけ前者、演者の刀さばきの見事さに息をのみ、つい拍手をしそうになりました。2年前、高千穂で見た観光神楽とはまた一段と高まった緊張感が漲ってライブで見たくなりました。また、精緻な藁蓑や木像などの民具も展示され、用の美、とはこれだと噛み締めた展観でした。

 追記:会場で販売されていた『東北の伝承切り紙―神を宿し神を招く』(コロナ・ブックス)の序文を赤坂憲雄・学習院大学教授(福島県立博物館館長)を書かれていて、その文章が実に胸に落ちました。民俗芸能・文化は、東北被災地の破壊されたコミュニティー再興の核となり、それは神社仏閣そのものと結びつき、いま宗教という「パンドラの箱」を開けるべきときがきたのではないか、と指摘されています。やはり日本の根っこは何か、考えていきたいです。







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August 16, 2014

Eテレで我が醜顔を見る…これも怪談か



 きょうは実家の母と父、兄のお墓参りに。実家からタクシーで20分くらいのところにある共同墓地で、たんぼの真ん中にあります。とても伸び伸びできる環境。自然折々の美しさが感じられる。父も、兄も、そこからしっかり母を守ってくれていることでしょう。感謝し、お願いしてきました。

 そして夜、11時。ETV特集で「見えないものが見えてくる〜白石加代子の百物語〜」が放送されました。残念ながら観ることができなかった、白石さんが演じる朗読劇、百物語の軌跡と最終公演を追った内容でした。日本の舞台、映画に欠かせない名俳優の「すごさ」の一端を垣間見ました。

 最終話は泉鏡花の「天守物語」。自分も大好きな作品です。白石さんが十数の役を演じわけ、鴨下信一さんの演出に四苦八苦する姿も。さらっと演じられる作品ではありませんが、やはりすごい。名演出家と名俳優ががちんこでぶつかり、それが素晴らしい作品に昇華する様子は、やはり舞台作品のかけがえのなさを実感。少し足が遠のいた劇場に行きたくなりました。

 そして「百物語」を紹介する一環で、今年の5月24日に開催された第4回「深川怪談」百物語会の様子が映し出されました(「あっという“魔”の10時間」)。すると、なんと怪談を語られる話者の姿に合わせ、たまたま自分が狐面をかぶった方の隣に座ったがために、自分の醜い顔が大映しに…。当日、せき風邪を患ってマスクをしていたのが唯一の救い。これも怪談の一つでありましょう。

白石加代子の「百物語」[宵の1] [DVD]
白石加代子
株式会社カズモ
2005-10-01








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August 15, 2014

必見!これがリニア中央新幹線の大災厄



 6月にもリニア中央新幹線の問題点について書きましたが(「原発と同じ、バラ色神話・リニア新幹線の巨大リスク」)、今回紹介する映像を見れば、いかにリニア構想が壮大な無駄なだけでなく、取り返しのつかない大失敗のつけを、日本国全体(国民、国土、生態系)で払わなければならなくなることに改めて戦慄します。

 子や孫の世代に日本がどうなっていもいい、という人ならまだしも、まともな皆さんなら黙ってはいられないはず。ぜひ、ご覧下さい。僕もどうしたらいいか考え中です。ちなみに3年積み立てたJR東海株はすべて売却しました。南海トラフ地震対策もしない同社に愛想を尽かしました。1カ月、新幹線が動かなければ資金繰り上、同社は倒産します。








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August 13, 2014

韓国映画、なぜすごい――国民全体が支える



 パク・クネ韓国大統領は嫌いです。日本の従軍慰安婦問題が解決していないのは十分分かります。日韓基本条約を締結する際、同問題は俎上にはのぼっておらず、あの条約をもって解決したとする自民党歴代、民主党政権の言い分には無理があります。しかし。いわゆる「いいつけ外交」をさんざんして顰蹙を買った朴大統領の政治手法には違和感を覚えざるを得ません。内政において失敗つづきなのを日本批判でなんとかしようというのが見え見え。韓国の若年層からは決して支持を集めていません。

 しかし。韓国の溢れんばかりの魅力を、たかが一人の政治屋のために見過ごしてしまうのは本当にもったいないことです。K-POPが世界的にヒットしているのはそのプロフェッショナルさに尽きるでしょう。歌がうまいのは当然で、その上で歌手一人ひとり、グループ一つひとつの魅力が様々で、もちろんすべてが優れているわけではありませんが、少なくとも海外に売り出す彼らの魅力は、たとえば同じアイドル枠でも日本のそれとの差はかなり大きい。プロアマ対決を見るようです。

 そしてこと自分に限っていえば、韓国の魅力は数々あれどK-POPを好きになった前提として、韓国映画のすごさ、がなんといってもあるのです。院生時代は邦画にかなり傾倒していたのですが、ある一本の韓国映画に出合い、その魅力に開眼しました。それがポン・ジュノ監督「殺人の追憶」です。もう10年以上前ですが、下高井戸シネマで鑑賞し、余りの衝撃に呆然としながら歩いて家に帰ったのをよく覚えています(20分くらいですが)。まずオープニングの映像の美しさと、練られた脚本。そしてすぐれた演出。それ以前に大ヒットしたけど個人的にはピンと来なかった「シュリ」や「JSA」には感じられい洗練がそこにはありました。

 ここで作品を個別具体的に挙げていくときりがないのでやめます。ただ、そうした韓国映画の躍進を支えたのは、政府がK-POP同様にコンテンツ産業の育成として大学に学部を作ったり、制作を支援したりするなどの政策をとったからとはよく言われます。もちろんそうですし、先のポン・ジュノ監督もそうした政策の下に誕生した監督です。しかしそれだけでは監督層の厚さや、傑作を次々生み出せる説明には足りない気がしていました。しかし先日読んだ「映画観客はどこにいる?──各種調査から考える」(松谷創一郎)という分析で納得しました。

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自分は多いときでは週1〜2回で劇場へ


 ほんとうに今、これは!という邦画が少ないです。ドキュメンタリー映画は素晴らしい作品が多いと思いますが、たとえば最近評価が高かった「凶悪」や「共喰い」、「渇き。」などは既視感すら覚えます(内藤瑛亮監督「パズル」といった傑作もなくはない)。一方で最近日本で公開された韓国映画「新しき世界」「怪しい彼女」「観相師」「ファイ」などを挙げるとジャンルも多彩でほんとうに観応えがあります。まだ韓国映画に触れていない方はぜひ、といいたいところなのですがグラフの通り、日本人は劇場に足を運ぶ人がそもそも少ないのです。それに比べて韓国の盛況ぶりを鑑みると、こうした国民的需要があるからこそ、世界的に評価される作品が生まれるのだということです。

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韓国人、断トツ


 いまのところアニメは完全に日本の独壇場といえますが、その制作工程において韓国の技術なくしてもはや成り立たないのも事実です。日本サイコー!と根拠もなく言い募り、韓国をあざけっていると、ただの「井の中の蛙」になって国際的に白い目で見られるのは時間の問題ではないでしょうか。日本が大好きだからこそ、危機感を覚えます。日本のよさをどこまで意識的に伸ばせるか、と。


殺人の追憶 [Blu-ray]
ソン・ガンホ
KADOKAWA / 角川書店
2014-06-27




新しき世界 [Blu-ray]
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TCエンタテインメント
2014-08-02







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August 12, 2014

ガンダムと集団的自衛権――架空であるからこそ憧れられる



 きのう、B1A4ファンミ参加のために2度目のZepp DiverCityへ。すると炎天下、機動戦士ガンダムが屹立していました。前回見たときは特に何も思わなかったのですが、今回はそうはいきませんでした。ガンダムは変わらずとも、彼(彼女?)をとりまく「日本」が変わってしまいました。

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青空に映える

 このガンダムのモビルスーツを、軍需産業の代表格である三菱重工やIHI、そこに税金をつぎ込もうとする自民党の政治家を中心に実用化しようという計画がまことしやかにささやかれています。その計画が語られるとき、まるで夢物語のように語られますが、このガンダムを見上げながら非常に違和感を覚えました。原発やリニア新幹線と同じ。それらがカタチになったとき、どんな災厄がもたらされるかは周到に隠蔽されているのです。

 もし、集団的自衛権が行使された自衛隊に実用化ガンダムが配備されたらどうなるか。へたしたら、米軍を守る口実でアフガニスタンやイラク、イランなどでこの巨大なガンガムが闊歩し、「敵」の攻撃をするのです。ガザを見れば分かるように、「敵」なんてものは実際にはいなくて、そこにいるのは抵抗する必死な市民たちと無辜の人々です。つまりガンダムが、誤情報を基に何の罪もない人々を殺戮するかもしれないのです。

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人との対象を見よ


 本当に、本当に、そんなことがあってはいけません。ガンダムが実用化されたとき、それはもはや「ガンダム」ではなく強力な殺人兵器なのです。以後、ガンダムがどのように語られるか想像に難くありません。ガンダムは架空の存在でいいのです。存在しえないからこそ、“クール”であり、子どもたちの憧れの対象にもなりえるのです。




reversible_cogit at 23:23|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)アニメ | 政治経済

August 10, 2014

戦時は日本もドイツもイタリアも同じ  ETV特集「“戦闘配置”されず〜肢体不自由児たちの学童疎開〜」

 

 ご近所に、身体障害のある子どもたちが通う都立光明(こうめい)特別支援学校があります。外観からしか知りませんがとても立派な施設で、登下校時のバスの乗り降りがスムーズにいくような構造も備えさすがと思っています。かつて隣には小児精神科専門病院として有名な都立梅ケ丘病院があり、引っ越してきた12年前、世田谷区はいいところだと思った一つの要因でした。

 9日に放送されたETV特集「“戦闘配置”されず〜肢体不自由児たちの学童疎開〜」は太平洋戦争末期、国策として「疎開」から見捨てられた同校の前進、昭和7年に開校した東京市立光明学校の生徒たちをいかに疎開させるか、当時の校長だった松本保平氏が粉骨砕身した様子を中心に構成されていました。ポリオの母をもつ身として、半ばわがこととして見ました。

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暁の星。自分が住む建物から。新宿、渋谷、六本木方面を望む

 自分がここで書くよりも、再放送が8月16日午前0時からありますので皆さんに見ていただきたいです。やはり家にTVがあるなら、ETV特集は毎回欠かさずに見ることをお勧めします。NHK総合では失われたジャーナリズムや人の良心がまだ息づき、番組内容に反映されているからです。テーマは様々、ときにリアルに、ときに文学性豊かに展開されるETV特集はまさに珠玉です。

 そして「“戦闘配置”されず」では、戦時中、子どもたちを疎開させることで兵隊の予備軍として戦闘配置する一方、銃や槍をもてない肢体不自由の子どもたちを疎開枠から外し、なかば見殺しにしようとした日本政府。その政策に子どもたちを守るために抗して行動した松本校長の熱意に、教育者としての信念に、人としての温かさに、記録映像から伝わってくる子どもたちに向けた優しい表情に、胸打たれました。

 一つここでエピソードを紹介するなら、松本校長が地方へ疎開できない子どもたちを学校で「現地疎開」させている様子を見学に来た近隣の教職員を案内した後で、彼らが「あなたはここであの役にも立たない子どもらの相手をひがなして飯をたらふく食って暮らしているのか。戦地の兵隊たちに申し訳なくはないのか。非国民!」「あんな子どもたちは家に帰してこの施設をお国のために役立てるべきではないのか」と言われた、と卒業生に涙ながらに語ったとのこと。

 思い出したのは、ロベルト・ベニーニ監督の「ライフ・イズ・ビューティフル」です。同作の中でナチス党(シンパ)の人々が豪華な食事をしながら障害者に手当てを与えるのは無駄であり、殺してしまえといった旨のことを笑いながら話しているのです。とにかくぞっとしました。同様のことを石原慎太郎もいっていますが、本放送を見れば帝国ニッポンも、ナチス・ドイツも同じ。これが戦争なのです。

 90歳前後の卒業生の皆さんが、同校での思い出を語るときの輝く眼差しが忘れられません。ユダヤ人には杉原千畝がいたように、全国唯一の肢体不自由の学校の生徒たちには松本校長がいたんだと思います。共産党員ももちろんそうですが、こうした全体主義の中で行動した良心の人たちがいたからこそ、日本は戦後、再起の礎を得ることが出来たのだと思います。憲法9条の原型を作った法学者たちもそう。だからなおのこと、戦争は二度と起こしてはいけないのです。


ライフ・イズ・ビューティフル [Blu-ray]
ロベルト・ベニーニ
ワーナー・ホーム・ビデオ
2014-02-05




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官僚市長と市民派市長――明暗分けた広島・長崎の平和宣言



 広島市の松井一実市長と長崎市の田上富久市長。松井氏は、自民党推薦の元厚労官僚で、大学教授・社民党衆院議員だった秋葉忠利前市長の後継者を破って当選しました。秋葉市長の平和宣言は名文の誉れ高く、その年その年の指針となっていました。

 一方、田上氏は前市長がテロで殺され、急転直下で立候補・当選した市の課長さんでした。主要対立候補は前市長の女婿という落下傘候補。しかし自分は、どうせ田舎のことだから血縁者が当選するんだろうな、と思ったのです。ところが。見事、市民から推された田上さんが当選したのです。長崎県全体は保守でも、長崎市民の意識は高かった。

 母が広島出身であり、自分自身、広島平和記念式典の合唱隊の一員として歌ったこともある身として秋葉前市長を誇らしく思い、被爆地の良識が結晶していると思っていました。ところが秋葉市長の引き際もよろしくなく、自民党の子飼いに市長の座が渡ったのです。

 結果、ことしの広島と長崎の平和宣言には大きな明暗差ができてしまいました。広島は集団的自衛権にも東電原発事故にも触れることなく、安倍総理の機嫌を損ねない当たり障りのないものとなってしまいました。一方、長崎の宣言には市民の声が反映されて集団的自衛権容認の国民無視や、原発事故への言及がしっかり織り込まれていました。

 さらに素晴らしかったのは、長崎での被爆者代表で元教員・城台美弥子さんの「平和への近い」です。集団的自衛権容認が戦争への道を開く、憲法の平和精神を踏みにじる暴挙であり、福島で甲状腺被曝におびえる住民がいるなかで原発再稼動・輸出を進める安倍政権を痛烈に批判しました。当たり前です! しかし、こんな当たり前の主張ですが、ノーカットで、それもNHK総合で放送されることはもう二度とないのではないでしょうか。

 城台さんの朗読中、不愉快そうに安倍総理は目を閉じて「聞く耳持たぬ」というオーラを意図的に発し続けていました。安倍総理が広島の平和宣言文を、去年のほぼ「コピペ」で済ませたことや、広島や長崎の被爆者から集団的自衛権撤回を求められても冷たくあしらったことは周知の事実です。戦争体験世代の被爆者に「国家存亡のため」などといっても通じないことも分からないのか。そんなのはウソだと、まさに被爆という経験で心身に刻んだ方々を冒涜しているのです。

 はやく広島市長も総理大臣も替えて、被爆国日本にふさわしい政策・メッセージを世界に発信しなければなりません。憲法9条をかなぐり捨てた日本に、これまでと同様の国際的信用などあろうはずがありません。今年の広島・長崎の式典は、市長の存在でこうもメッセージが変わってしまうことを明らかにし、日本の今の悲しい実相をあぶりだす場でもあったのです。



reversible_cogit at 02:13|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)政治経済 | TV

August 09, 2014

氷とドライアイスで凍土壁??



 地下水流入で毎日400トンずつ増えていく汚染水。東電福島第1原発からは現在進行形で大気中に、そして海中に絶え間なく膨大な放射性物質が排出されていますが、その海中への流入を少しでも食い止めようとしているかに見える、凍土壁による地下水流入の前提工事。予算は税金319億円。

 僕はまったくのしろうとですからパイプを埋め込んで凍土壁を造ると知ったとき、液体チッソでも流し込んで凍らせるのだと当然のように思っていました。ところが、なにやら氷やら、ドライアイスやらをパイプに流し込んでる…。最初、冗談かと思ったらこれが本気のようで、延々それを繰り返して全然凍らないようです。なんというか、凍るわけがない、って思うのがおかしいんですかね。

 そして案の定、ドライアイスは水に触れて二酸化炭素のガスを出し、浮き上がってくるから大変、とのこと。氷周辺も温度は低くなるけど凍らない。当たり前だろ! まったくこの国はどうなっているのかと思います。けさのしんぶん赤旗でも詳しく紹介され僕も思ったことですが、ならば鉄板でも埋め込めばいいんじゃないかと専門家も指摘していました。頭の悪い安倍総理の指導の下では、本来頭のいい皆さんまでバカを演じなくてはいけないのでしょうか。

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 そして最近とくに思うのですが、スイス大使館が資料で示したように、メルトダウンした核燃料はとっくの昔に原子炉も、建屋の床も突き抜けて地下水汚染を引き起こしているのではないか。しかし一般マスコミは、政府や東電がいうままに、概念図・イメージを示す際に絶対にそんな状態は描かないで原子炉や建屋に水がふつうにたまっている状態なんですよね。ウソの加担にならなきゃいいけど。




reversible_cogit at 02:34|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)政治経済 | 新聞

August 06, 2014

暁の星のいと美しきかな そして、ヒロシマ原爆の日



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新宿のビル群、防衛省のアンテナ、東京スカイツリー、NHK放送センターなどが

 5日の午前4時。自分が住む建物から新宿、六本木方面を久し振りに撮りました。今回はさすがにXPERIAではなくα6000で。こんなに美しく空が撮れるとは思いませんでした。暁の星は、バッハの名曲ではありませんがほんとうに美しい。大地震がくればなくなる光景です。



 けさ、出勤前にTVに向かって黙祷しました。記憶にある限り、広島原爆の日が雨なのは初めてだと思ったら43年ぶりだそうです。学部時代、広島市立病院の看護師だった親類の伯母さんのつてで平和記念式典の合唱団に交ぜてもらい、式典で歌うことができました。当時は村山富市総理でした。

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 母方の親類は広島市内で多く亡くなったそうです。母の姉、今は亡き伯母さんが台湾から引き揚げ後(祖父は台湾で日本人学校の教師でした)、広島の焼け野原を歩いたと一度だけ話してくれたことがあります。ただそれが、被曝の悲惨さと結びつく、実感を伴うことはないのです。

 そう。長崎も含め原爆資料館は何度か見学しましたが、まだ本当に自分のなかに核の悲惨の実感はないのかもしれません。もしろ、放射性物質による後遺症の恐怖のほうが、東電福島第1原発事故のせいで身近となり、自分も確実に食品から内部被曝していると思います。


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ここに越した当初はよく見えた東京タワーも木の成長の陰に

 たぶん、どんなに資料に当たり、想像をめぐらしても、原爆の閃光や爆風にさらされ、のちのち後遺症が顕在化した皆さんの恐怖や苦しみ、怒りを僕は理解できないのだと思います。しかし、それでもいえることは繰り返してはならない、といこと。核兵器の炸裂も。原発の爆発も。





August 05, 2014

たまには心地よく白河夜船  小倉貴久子の「第13回 モーツァルトのクラヴィーアのある部屋」



 きょうは午後、新宿ピカデリーで18時終わりの「るろうに剣心 京都大火編」を観て、いそいで初台の東京オペラシティ・近江楽堂で19時スタートで開かれた、モーツァルトとボッケリーニのソナタを小倉貴久子さんのフォルテピアノ(クラヴィーア)、杉田せつ子さんのバロック・ヴァイオリン、懸田貴嗣さんのバロック・チェロの演奏で聴きました。ライブで杉田さんの演奏は3度目、小倉さんは初めて、懸田さんは何度も(笑) 

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 今回の収穫は杉田さんのVnがボッケリーニの故郷、イタリア・ルッカで使用されていた1732年製のものであること、懸田さんのルッカにおける思い出、チェロ奏者として名を馳せたボッケリーニがチェリストにとって非常に重要な存在であることなどを知ったことです。実際、今夜演奏されたボッケリーニの「チェロとバッソのためのソナタ ト長調」はとても聴き応えがあり、自分にとっての今夜の一番の作品だったことです。

 ただ、今夜改めて噛み締めたのは、7連勤のあとに映画、コンサートのはしごは体力的に無理なことと、自分はやっぱりバロック音楽でないと集中できないことです。ということで、意識があって聴いているのですが、半分眠りに足を踏み入れていました。いままでバロック音楽のコンサートではほぼないことなのです。やはり古典派の音楽は自分の肌に合いませんでした。通奏低音の概念がもはやないのが大きいかな、とも考えます。とはいえ、贅沢でゆるやかなひとときを過ごせました。




reversible_cogit at 23:24|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)コンサート 

8月23日、二転三転――事実上、初めての山形へ



 あ〜〜〜7連勤終わり。休みは火曜日だけですが、連日の緊張感の重圧から1日でも解放されるなら大きい、と今噛み締めています。

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日曜日の東京は、四国・九州・韓国の大荒れをよそに猛暑なのに澄んだ快晴

 8月23日土曜日。その日を休むために代わりの方にお願いしたのはもう1カ月以上前のことでした。というのも、K-POP・VIXXの評判が高まり、どんなか聴いてみたくて抽選に申し込んだのでした。しかしどうせ当たるであろうと高をくくっていたらなんとはずれ。さらに一般発売は一瞬で完売しました。おぉ、せっかく休みをとったのに無為の休日になる!

 そこで考えに考え、小学校からの幼なじみを誘って群馬のハンセン病の見学施設、重監房資料館へ行こうと決めました。友人は忙しい上に人権には無関心。なので彼女しか誘えないと思ったのです。するとうれしくも誘いにのってくれ、宿もとって準備していたのですが…いきなり同日、彼女の住む建物のメンテナンスで強制在宅が余儀なくされたのです。やむなく仕切りなおすことにしました。

 ならばどうしよう。橋下市政のために事実上閉館に追い込まれるピースおおさかに行こうか? 初めての沖縄で戦跡を回ろうか? 長野県下諏訪町の「万治の石仏」に会いに行こうか? 富山県上市町の「おおかみこどもの雨と雪」詣でをしようか?奈良県十津川村の玉置神社参詣へ赴こうか?… しかしどれも1泊2日の旅程、せっかくの夏休み、車の運転がペーパードライバーのため無理、JALマイル活用のため席が空いているか、あるいは航路があるか、などなど考えると却下となりました。

 そこで浮上したのが山形でした。子どもの頃、連れて行ってもらったことはあるらしいのですが記憶になく、NHKBSプレミア「新日本風土記」を見れば美しく、立石寺や出羽三山神社がおわし、月山があり、酒田の旧港があり、好きな作家の黒木あるじさんの住む土地、大切な友人の父方の故郷であり(おじいさまは加藤紘一氏の後援会員)、マイミクさんが当地で大学教授を務める地であり、学部時代に明治学院大から講師としていらしていた尊敬する先生の故郷でもある等々。いいぞ。お邪魔したい!

 ということで、東方地方には仙台と盛岡、平泉以外いったことがなく、それでも青森、山形には憧れを抱いている自分としてえいやっと決めました。JALの席も空いていて確保完了。宿もるるぶで探してよさげなところを見つけることができました。はてさて。あとはお天気です。かんかん照りもいいですが、少しの雨なら風情があって逆にいいかも、とも思えます。いつものように予定をつめこまず、目的地をしぼってゆっくりお邪魔したいものです。



reversible_cogit at 03:01|この記事のURLComments(1)TrackBack(0)お参り | 観光

August 03, 2014

ブルボンヌさん、しんぶん赤旗に登場――物事を胸の奥で受け止め、考える



 仕事に向かう電車の中、しんぶん赤旗(8月2日付)を開くとブルボンヌさんが笑顔で登場しました。ブルボンヌさんはEテレでよくお見かけしますが、友人に以前、彼女がライターの斎藤靖紀さんと同一人物だと教えてもらい、驚くと共になるほど、とも思いました。

 正直、斎藤さんの書いた文章に多く触れたわけではないのですが2003年、斎藤さんがアニメ「WOLF'S RAIN」(ボンズ制作)を絶賛されている言葉を読み、これは!と見てみると本当に素晴らしかったのです。音楽も菅野よう子さん(菅野さんは今でこそですがアニメ音楽の人なのです)。 OSTを愛聴しています。

 このインタビュー記事を読まれても分かりますように、物事を胸の深いところで受けとめて考えられる方なのです。マイノリティーがこの世界の「あそび」であるという表現はさすが、とうなる。しなやかさが強さであり、なくてはならない存在。胸に落ちます。記憶に刻みます。

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WOLF’S RAIN O.S.T.2
菅野よう子
ビクターエンタテインメント
2004-01-21









reversible_cogit at 02:44|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)政治経済 | アニメ

August 02, 2014

美味・悦な夜&1年ぶりの深夜首都高



 8月1日、7連勤の折り返しでした。そして約1年ぶりの18-2時勤務。朝刊向け最後の勤務帯です。大変かなと思ったのですが、もう全然。すんごく楽しかったです。仕事としても(問題なければ)充実していましたし、なんといっても帰宅はハイヤー、かつ時速うん十キロで首都高を駆け抜けるどきどき感は、1年前も今回も同じでした。

 まず昼間の首都高ではありえない速さで、代々木のカーブを曲がるスリリングさはたまりません。また、ふだん目に入らなかった広告(六本木にソ・イングクの大きな広告発見)や、思いのほかオペラシティのビルが高いな、と感じました。やはり昼間見るのと深夜では、見えてくる風景も違っていいものです。今月末、3日連続でまたあるので楽しみにしたいと思います。

 で7月31日の夜、翌朝早起きが不要ということで通算8〜9年くらい、明大前時代からお世話になっているマスターのお店、千歳烏山の来っ亭にお邪魔しました(明大前では「うら通り」)。いやぁ、ほんとおいしいのです。マスターの味のセンスの良さに、僕は完全に飼いならされているいっていいでしょう。ピクルス感覚になった砂肝や、絶品のアジフライ、そしてミョウガたっぷりの定番ざるラーメンはその典型。素晴らしい。


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盆踊りが千歳烏山駅近くで開催されていました。都議選中、里吉ゆみ都議の演説をここで2度聴きました

 そして夏季限定でバニラアイスと果物のスムージーがメニューに加わっていて、31日はモモの最終日でした。ほんとうは1日からのスイカがよかったのですが致し方なし。とはいえ、モモのバニラアイススムージーを一口味わった途端、口腔に広がる爽やかな甘さと香り、冷たさは絶品でした(注文を受けて手作り)。脱帽!そして今回はカウンターで素敵なほかのお客様にも恵まれ、楽しいおしゃべりと共に至福の時間を過ごせました。また秋にいかねば!

 追記:明大前時代のお店にまつわる心霊話はもったいないので次回に書きます。

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