July 2012

July 21, 2012

“被災地・水戸”で制作するということ 前編   「高嶺格のクール・ジャパン プレ企画 トークセッション:小熊英二×高嶺格×吉岡洋」



  きょうは小学生ぶりで水戸市へいきました。「スーパー日立」という特急で上野から1時間ちょっとで意外と近いです。目的地は名高い水戸芸術館。その姿はNHK中継でお馴染みですが、実際にお邪魔するのは初めてでした。開催されるのは한동현(ハン・トンヒョン)さんのtwitter情報で知った、「高嶺格のクール・ジャパン プレ企画 トークセッション:小熊英二×高嶺格×吉岡洋」です。小熊先生もすごですが、僕の目的は高嶺さんのお話が聴きたい、という思いからでした。

  まずは腹ごしらえ。12時5分に水戸に着き、なにか水戸らしいものが食べたい!と思い少し歩くと、てんまさ、という郷土料理のお店があり、入ると納豆コース(1580円)なるものがあり即決めしました。同店の売りは鮟鱇料理らしいのですが、昼からコース4000円はちょっと勇気が出ませんした(笑) それに原発爆発がなかったら鮟鱇食いてぇ! とはいえ納豆コース、梅あえや海鮮あえ、そしてオムレツ、はさみ揚げなどあって充実。おいしかったです。


CA3H04550001



  松屋銀座風な外観の東電水戸支店を横目にしつつ駅から歩いて約15分、水戸芸術館の名物タワーが目に入ってきました。なんというか、想像していた色でなかったです。もっと青いと思っていたのですが、ライトアップ効果だったと実物を見て知りました。そして思ったより全体としてこじんまりとしている。というか、あんまりデカデカしくなくてイイし、開放された庭で家族連れが遊んでいて、それでも故・吉田秀和、小澤征爾といった皆さんがかかわる文化の拠点です。すごいことです。

CA3H04570001


  さて、きょうの目的だった高嶺さんを僕はまだ知っているようで知らないです。2010年、森美で開催された「六本木クロッシング2010展:芸術は可能か?」で、高嶺さんの作品、「Baby Insa-dong」を見て感銘を受け、エッセイ集『在日の恋人』を読んだだけ。2011年の2月から3月に横浜美で開催された「とおくてよくみえない」展は絶対に行こうと思っていた矢先、3・11でそれどころではなくなってしまいました。そんな氏が、今年12月に水戸芸術館で展覧会を開催し、そのプレ企画としてのトークセッション開催となったのです。これは!と思い、足を運んだ次第です。

 ていうか、한さんをフォローしてなかったら全く知らなかったことですから、やはりtwitterは大切な情報ツールですね。

  続きは、あす。 仕事から帰ってきて書きたいです。


在日の恋人
在日の恋人
クチコミを見る


高嶺格 とおくてよくみえない
高嶺格 とおくてよくみえない
クチコミを見る


reversible_cogit at 23:40|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)展覧会 | 政治経済

July 20, 2012

「隋園別館」の由来?



 しんぶん赤旗の月イチ連載の神戸大名誉教授・「一海知義の漢詩閑談」。本日は「風情は色気 中国古典に見る」というタイトルで、中国近世において「風情」という言葉は日本のそれと異なり、色気のことをさすというお話しでした。

 そうした中、清朝の詩人・袁枚(えんばい)が紹介されました。「若(も)し風情は老いては分つ無しと道(い)わば 夕陽(せきよう) 合(まさ)に桃花を照らすべからず」(もし老人には風情、すなわち色気の分配がないというのなら、沈みゆく夕日が美しい桃の花を照らすはずがない)。

 年老いて色気がなくなるなんてことはないですよね、確かに。そして色を好む者、食への指向も高い、にご他聞にもれず、袁枚はグルメで、その号を冠した料理本「隋園食卓」という著書があるということです。 

 そう、恐らくこの「隋園」、あの新宿にある有名中国料理店、「隋園別館」の由来ではないかと思います。星新一さんや小松左京さんがSF作家の協会発足式を行ったのも同店。文学と縁が深い美食の殿堂、久しぶりにお邪魔したくなりました。






July 17, 2012

「代々木公園」を原点に  



CA3H04540001



 けさのしんぶん赤旗と、東京新聞の1面です。ともに、目標人数を上回る市民が集った「さよなら原発10万人集会」の模様が大きな写真で写しだされています。自分は仕事でいけなかったのですが、感激です。

 大江健三郎さん、鎌田慧さん、坂本龍一さん、落合恵子さん、瀬戸内寂聴さん、澤地久枝さん、内橋克人さん、津田大介さん、もんじゅ君ら文化人(+炉)、そして共産党からは志位和夫委員長、市田忠義書記局長ら、衆参から10議員が参加しました。そして何より、労組や市民団体、共産党などが呼びかけ人ではありますが、自主的に参加した市民が主役なのが素晴らしい。

 寂聴さんが「いま原発をとめる、政府の方向を変えることになるか、わかりません。それでも集まらなければならない。たとえ相手が聞かなくても言い続けましょう」と強調されたそうですが、本当にそう思います。官邸前を何万人が毎週、毎週、埋め尽くそうと、正気の狂気の総理大臣は耳を貸しません。「愚民の騒擾」とでも思っているのでしょう。

 原発推進勢力の厚顔ぶりは将来の原発・エネルギー政策にかかわる意見聴取会で、「抽選」で選んだという意見陳述人の中に、必ず電力会社や原子力機関の関係者がまじって意見をいう事態に象徴的です。明らかにヤラセなのにシラをきる細野原発担当大臣…。きょうも、「志賀原発の直下に活断層の可能性」を指摘されても、まったくそれに応えようとしない北陸電力のように、彼らは今この嵐のときを耐えればなんとかなるだろうと思っているはずです。どうせ日本国民は熱しやすく冷めやすい、と。野田総理がなんの反応しないのもその腹積もりだからでしょう。

 だからこそ、「7.16代々木公園集会」を原点に、物言う市民であり続ける必要があるのだと思います。そして、きっと気付くはずです。原発問題は、政治全体の問題であり、選挙でどういう選択をすべきだったのか、ということを。日和って投票しても何も変わらないどころか悪化します。いま、雨後の竹の子のように「脱原発」を掲げる政党や議員が続出していますが、どの政党が脱原発のロードマップを描いているか見極めなければなりません。選択のときは、間近に迫っているかも知れません。








reversible_cogit at 23:21|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)政治経済 | 新聞

July 16, 2012

“病”膏肓に入る



 きょうは仕事でした。もし仕事でなかったら、代々木公園の脱原発集会に参加していたと思います。ただ、きのう新宿と新大久保を往復しただけで軽い熱中症になったくらいなので(強冷房による急激な温度変化もありましたが)、かえっていけなくて良かったような。。。実地運動は若者と、鍛え方が違う老後世代にお任せします。彼らこそ原発の責任世代ですし。

 きょうはあんなに高温だったのに職場からの眺めがよく、房総の君津もよく見えてすごいな、と思っていたら、さきほどNHKニュースで富士山まで都心から観測できたと伝えていました。非常に稀なことで、南風があったからだそうです。なるほど。そして渋谷の夕景もきれいで、ケータイでつい撮ってしまいました。


CA3H04530001



 さて、「ポイント3倍」に弱い僕ですので、さきごろNTTDoCoMoの子会社となったタワレコ渋谷店に仕事帰り寄ってみました。BIGBANGかな、BEASTにしようかな、と悩んでいたら(あ、きょうはバロック音楽コーナーにはいかずK-POPのみで)、H.O.Tと、そのすぐ隣にA'ST1(エースタイル)のCDがあることに驚きました。前者は2002年、後者は2009年の製造で、2グループとも今は解散しています。まだ売ってるんだ!が一番の感想です。

 H.O.Tは、今のK-POP全盛の基礎を築いたSMエンタテインメントのグループで、A'ST1はそのメンバーに、今ではNHK「ハングル語講座」やBSJAPAN「韓流ファクトリー」で流暢な韓国語を操る藤原倫己さんが所属していたグループです。次々デビューする新人作品を買うならまだしも、こうしたいわば過去の振り返りに自分は入ってしまったのかと…。愛してます!、K-POP(笑)

THE BEST
THE BEST
クチコミを見る


A'ST1 1st Mini Album(韓国盤)
A'ST1 1st Mini Album(韓国盤)
クチコミを見る





reversible_cogit at 21:55|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)政治経済 | 音楽

July 15, 2012

いわさきちひろの“魅力”の理由を垣間見る  海南友子監督、ドキュメンタリー映画「いわさきちひろ 〜27歳の旅立ち〜」



 思えば幼いころ、一番身近にあった絵画がいわさきちひろ作品だったと思います。実家には母が大切にする全集があり、カレンダーといえばいわさきちひろでした。今改めてみれば、そのやわらかいタッチはいうまでもなく、斬新な構図や色使いはやはり特筆すべきでしょう。そんな彼女の、僕も全然知らなかった人生をたどる海南友子監督のドキュメンタリー映画、「いわさきちひろ 〜27歳の旅立ち〜」をテアトル新宿で観ました。

10072628


 タイトル通り、27歳が彼女にとっての大きな転機でした。それは戦前・戦後の転機と重なり、彼女が自分の人生を親に従ったか、「自分で決める」のかという違いともなりました(昨晩観た「ヘルタースケルター」のりりこを思い出しました)。戦前の大きな悲しみと苦しみの出来事があったからこそ、疎開先の長野から女一人で画家を目指して上京し、様々な経験をへて我々がよく知るいわさきちひろの画風が生まれていくのです。そこには松本善明さんとの出会い・結婚、そして猛さんの出産・子育てがあり、編集者の協力があり、家庭を筆一本で支える時代も経るのです。作中では善明さんのラブレターの一節が読まれ、恋愛小説以上にロマンティックです。

 ちなみに夫の善明さんは弱きを助ける弁護士であり、日本共産党の衆院議員を11期務めた方として有名で本作にも登場します。ちひろ自身も戦後、共産党に入党することで戦前のつらい体験を乗り越え、その後の人生を反戦平和への思いを作品に重ねる生き方につながります。本作では共産党という言葉は敢えて強調されませんが、善明さんとちひろの出会いは神田の党事務所だったそうですから、いろんな意味で抜きには語れません。息子の猛さん(安曇野いわさきちひろ美術館・前館長)は共産党推薦の長野県知事候補を務め、次回も挑戦するでしょう。
 
 それにしても、東京、安曇野の両いわさきちひろ美術館館長を務める黒柳徹子さんも語るように、あんなに素敵で優しい作品を描くちひろが、あれだけの試練をへて辿り着いた画風ということに、もちろん作品はそれ自体で完成していますが、こうした彼女の人生を知って接すると、またその表面には表出しない重厚さを思います。つまり、ああした画風を貫けたのには、それ相応の意味があるのだと。だからこそ、今も多くの子どもたち、お母さんたちに読み継がれているのでしょう。そうした“魅力”を知ることのできる本作でした。



reversible_cogit at 20:24|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)映画 | 政治経済

July 14, 2012

月並みな演出超える沢尻エリカ   岡崎京子原作、蜷川実花監督、沢尻エリカ主演、「ヘルタースケルター」



 きょう封切り、岡崎京子原作、蜷川実花監督、沢尻エリカ主演、「ヘルタースケルター」をシネクイントの最終回で観ました。もし、本作を観たいと思う関東在住の皆さん、シネクイントで観ると上がりますよ。理由は作品を観れば分かります。

 さて、僕には珍しく原作を読んだことがある作品です。しかし読んだのはおそらく10年近く前であり、この部屋のどこかにある筈のですが…(笑) とはいえ、どんな物語かを忘れたわけではなく、自分の中では「リバーズエッジ」の次にくる作品と認識しています。つまりは、マンガを余り読まない自分にとって、思い入れのある作品の映画化であるということです。


hs_poster1



 で、まずは面白かったです。映像の華麗さはもとより、音楽がよかった。ソプラノの激しさ、弦楽器の奔流は、ヒロイン・りりこ(沢尻エリカ)の不安定で、荒波が猛り狂う心象と呼応します。ただ、演出としてはふつうでした。特に目新しい発見というものはないと感じます。映像の派手さ、華麗さと、映像表現や演出の巧みさは別物と考えるべきでしょうから。消費される欲望、女子高生を中心とした消費文化、マスコミの万年同じな状況など、原作では感じなかった月並みさに溢れています。

 しかしそれでもなお本作が燦然と輝くのは、沢尻エリカという主演を据えたことにあります。彼女をとりまく出演陣も主役級ですが、やはり彼女あっての本作といえます。つまり、ほかの登場人物たちがどこか演出による月並み臭を発する一方、彼女の存在感は作り物感いっぱいのセット(演出としての虚構空間という意味ではなく、本当につくりものっぽい)の中にあって圧倒的です。

 エリカ嬢が、蜷川監督に初日舞台挨拶で「好きなシーンカットされちゃった。がっつりなくなってた」といったのが象徴的でしょう。つまり、本来はあったはずのエッジが削り取られ、月並み臭をさらに発しているに違いありません。蜷川監督自身の商業写真への愛憎が全面にでているのも鼻につきますし、それが限界なのだとも。そして思いは原作へと回帰するのです。


ヘルタースケルター (Feelコミックス)
ヘルタースケルター (Feelコミックス)
クチコミを見る


reversible_cogit at 23:59|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)映画 | 書籍

July 13, 2012

また自民党はJALを喰い物にするのか



 実家に帰り、久しぶりに朝日新聞を読むと驚きの記事がありました。自民党が日本航空の▼再上場に反対し、さらに▼国際線などの新路線開設を期限を定めて禁止、▼大赤字・会社破綻の元凶となった国内地方路線の復活を求めているそうです。

  朝日新聞は全日空の大株主ですから日本航空に利する記事は掲載しませんが、これが事実ならまさに由々しき事態です。日本航空が会社更生法の適用を受け、徹底した合理化路線によって過去最高益をたたきだした今、再上場は当然のことです。税金を投入して再建がなった日本航空だからこそ、再び日本の“フラッグ・シップ”として再拡大を果たし、世界的には知名度の低い全日空では果たし得ない役割を担える、JALの翼が世界に羽ばたくことこそ意義があるのです。

  同時に、再上場には異なる意味もあります。それは、個人株主が増えることで、経営の透明化や健全性が問われるからです。もちろん金もうけしか頭にない株主はいるでしょう。しかし、自分が株主になりたいと願うのは、株主優待のうま味ももちろんですが、会社経営に発言権を得ることができるからです。日本航空は合理化する過程でベテラン職員の首を必要以上に切り、そのしわよせが現場にきているからです。全日空のように最近続く、大事故寸前のトラブルは起きていませんが、再上場を目指す企業として以前に、小さなミスが続発している実態は改善しなければなりません。




  つまり、自分を含めた真にJALの再建を願う株主は不当で過剰な解雇を許しませんし、それを日本航空に求められるのは個人が株主になれるからこそです。こうした道を閉ざし、ふたたびJALを票集めの道具、喰い物にしようとする自民党は恥を知るべきです。全日空からの献金攻勢もあるのでしょう。民主党のほとんど唯一といえる成功した政策をだめにしたい思惑もあるのでしょう。全く愚かしいことであり、日本航空は毅然として、国民の笑顔を運ぶ翼として再上場に向かって邁進すべきです。




reversible_cogit at 23:30|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)政治経済 | 新聞

July 12, 2012

異常気象が迫る政治決断



 テレビのニュースで見る、熊本・大分を中心とした九州の大雨被害の尋常ならざる状況にただただ息を呑みます。昨年の和歌山・熊野を襲った大雨も同様、局地的な異常な大雨被害、さらには竜巻発生などと、日本の梅雨が涼しくない近年、気候が明らかに変化した印象を受けます。毎年、このような被害が出ては公共事業は別にして、経済には大打撃でしょう。

 一方、毎朝NHKBSで見る世界各国のニュースでは、米国が記録的な熱波に襲われていることが連日伝えられ、温暖化が進んでいるという分析が伝えられました。またフランスでは北部が低温、南部が高温と分かれ、異常気象がフランス国内で現出。またつい最近まで、韓国は旱魃寸前の状況でした。

 つまり、世界各国で異常気象の状態なのです。天気のことだからどうしようもない、と最早いえないのではないでしょうか。原発が「温暖化対策の一環」として建造されてきましたが、それにしては余りにもリスクが高いことが日本の原発爆発大人災で証明されました。つまり早急に原発に代わる、温暖化ガスを出さない再生可能エネルギーによる発電設備が必要になっています。

 この異常気象が常態化すれば、必ず再生可能エネルギーへの需要が高まります。いま、日本が何をすればいいか明々白々。日本の高い技術力に、さらに政治が「原発ゼロ」への行程と同時進行で予算を投入すべきです。予算こそ政治です。社会全体が疲弊する消費増税よりも、税収全体を押し上げる政策が必要です。異常気象が政治決断を迫っています。



reversible_cogit at 22:39|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)政治経済 | TV

July 10, 2012

サプリメントがやめられない



 以前TVで、作曲家の三枝成彰さんがやまほどのサプリメントを一気に飲んでいたのを見て、ゲっ!と思ったのは今は昔。なにしろ、それに近い状態に自分がなってしまっているからです。

 朝は、

 醗酵黒セサミン
 パーフェクト野菜
 EPA
 オルニチン
 シソの実油
 マルチ・ビタミン
 マルチ・ミネラル 
 葉酸         以上、DHC
 ビタミンD          大塚製薬
 白刀豆粒          山本漢方製薬


 寝る前は、

 ラクトフェリン                 ライオン
 プラセンタ    
 濃縮金時ショウガ+濃縮黒酢
 レスベラトロール+長命草     以上、DHC


 これらに来週から寝る前、「スルフォラファン」目当てで、

 発芽ブロッコリー      小林製薬

 が加わります。

 こうまでふくれあがったのは、これがあれに効く、これに効く、という吹聴をそのまま信じているためです。月に2万円くらいになりますが、健康のため、と思うとやめられません。人としての弱さを映すかのようです…




July 08, 2012

原発・核推進の片棒を担がない生き方を――肥田舜太郎先生講演会




 きょうは、あの肥田舜太郎先生のお話が聴けるということで世田谷区民会館集会室へ。“肥田舜太郎さんが語る「放射能の内部被ばくの脅威」”(世田谷革新懇話会主催)と題され、肥田先生が軍医時代(当時28歳)の広島での被爆体験、長年にわたる被爆者への医療活動を通じ、放射性物質による内部被曝の危険性、核兵器や核施設である原発の問題点、311後の汚染された日本での生活など、今年95歳とは思えないかくしゃくとした語りぶりで、椅子に座られることもなく質疑応答も含め2時間以上、お話をしてくださいました。きのうは大阪で講演をされたそうです。共産党員の皆さんにとっては、まさに鑑的な共産党員でしょう。


DSC_2062



 先生は開口一番、この日本で生活をする限り、食品による内部被曝を免れることは不可能だと指摘されました。また、子どもたちにこれからどのような影響が出てくるかも予想がつかず、希望をもつことは厳しい、と。半世紀以上、自らも被爆者であり、被爆医療に取り組み研究されてきた先生の口からこうした言葉がでてくることは、本当に日本は放射性物質による汚染国になってしまったのだと、実感しました。もちろん、産地や製造メーカーで汚染度合いは違うでしょうし、それに気をつけることは全く無意味ではないにしろ、先生も強調するように、いまだにフクイチから放射性物質が大気中、海水中に、ばらまかれているのが現状ですから…。

 そして「政府は、内部被曝の影響はないというスタンスが基本」といった旨を糾弾されます。そもそも、広島の被爆者研究機関(医療機関ではない)ABCCは、内部被曝に関して研究をしていない、つまり内部被曝の人体への影響を認めなかった。その研究グループの末裔である福島県立医大副学長に就任し、「放射能は安全です」と吹聴して福島県民の健康調査権を握っている山下俊一氏が、県民の内部被曝に頓着しないのは道理なのです。いつもお世話になっている、一度は放影研(ABCCの後継機関)入りも考えたという心療内科の先生(東大卒と数年来のおつきあいで最近知る)が、あそこでは内部被曝はないというのが宗教のように信じられている、と指摘されたとを思い出しました。

  つまり、広島・長崎における被爆者も、東電福島第一原子力発電所の爆発事故による被曝者も、その内部被曝者は政府に見捨て続けられている、のだと。広島・長崎では、熱戦・爆風による被害は強調されても、放射性物質を体内に取り込んで起こる内部被曝に関しては認められず、当初政府は補償を拒んできたのです。しかし、肥田先生をはじめとする被爆者の皆さんが協同し、やっと政府に被爆医療の助成を認めさせた。けれど、基本はやはり被爆時の爆心地からの距離で差別され、内部被曝は基準となっていないのです。こうした内部被曝者への差別が今も、民主党政権の原発事故対応の基本方針なのです。


DSC_2065



 ほかにも、原発が通常運転時にも常態的に放射性物質を排出し続けていること、NY−東京間往復の自然被爆(人間は免疫力をつけている)と、人工の放射性物質による被爆を単純比較し、平気でTVで喧伝するデマがまかり通っていることなど、政府や東電、マスコミが内部被曝の影響を覆い隠すためにウソをつき続けていることを指摘されました。こうした中で、放射線の中で生きる覚悟を決め、自分の命を守るのは自分しかおらず、内部被曝について我々一人ひとりが自分のこととして真剣に考えることが重要であり、自分の命に代わるものがないことこそが「人権」であると熱く訴えられました。

 最後に先生は、原発・核推進の片棒を担がない生活をすることが重要である、と強調されました。米軍が持ち込んだ核は速やかに持ち帰ってもらう。そして一旦止まった原発は、二度と動かしてはならない。こうした運動に加わることが、孫やその子どもたちに我々親世代がとるべき責任なのだと。このままいけば日本は子どもが成人まで成長できない、国家存立が危ぶまれる状態になるのではないかと危惧を述べられました。先生にも多くのお孫さんがおられますから、実感ある危機感です。今、市民が問われているのは何か、厳しい現実を示されつつも、大きく問うてくださった講演会でした。


ヒバクシャ ~世界の終わりに~ [DVD]
ヒバクシャ ~世界の終わりに~ [DVD]
クチコミを見る


  先生を初めて存じ上げたのはこの作品ででした。ソ連の核実験と、日本の流産率の因果関係に言及されていて本当に驚きでした。先日公開されたばかりの、先生の活動を追ったドキュメンタリー映画「核の傷」も必見です。







July 07, 2012

厳しい童話――杉井ギサブロー監督・脚本「グスコーブドリの伝記」



 「銀河鉄道の夜」(1985)と同じ杉井ギサブロー監督のテイストが垣間見られる作品に、幻想の美しさが味わえ、後味も甘苦さがせいぜいと高をくくって新宿ピカデリーで観た「グスコーブドリの伝記」は、宮沢賢治の誠実さと艱難辛苦とルサンチマンとコンプレックスがないまぜになっていました…。映像としては美しく、音楽も小松亮太で素晴らしい。ただ、観応えがはあったのですが、その重さに唸るばかりです。


10733



  主人公のグスコー・ブドリ(CV小栗旬)はイーハトーブの首都から離れた山奥の樵(きこり)の息子で、父母と妹と楽しく暮らしていました。しかし、大飢饉が同地を襲い一家離散。一人故郷を後にして旅立ち、その途中で出会った農家で数年働いたり(そこで蔵書を多く読む)、首都に出て学が認められ火山研究所に就職したり、と不都合と都合のよさが入り組んで展開します。しかし彼の最後は…僕には受け入れがたいものでした。

  東日本大震災にも通底する、様々な意味で厳しい物語が誕生したのは、やはり東北農業の厳しさや、宮沢賢治の思想に深く根ざしていると思います。きょう昼間、映画を観る前にたまたま“信念に生を賭す”とはどういうことかとふと考えたばかりでした。グスコー・ブドリの最後の思いは、天涯孤独の彼だからこそのものであろうし、宮沢賢治がそうありたい自分の投影でもあったことでしょう。

 3・11後の日本は、宮沢賢治の想定を遥かに上回る惨状です。火山も噴火するかもしれないし、すでに原発が爆発して汚染国であり、まさに被曝の日々です。財政も破綻寸前、否、もう手遅れなのかもしれません。もはや明るい未来などない日本を、どう生き抜けばいいでしょうか。だけれども、第二のグスコー・ブドリを求めてはいけないと思うのです。

銀河鉄道の夜 [DVD]
銀河鉄道の夜 [DVD]
クチコミを見る






reversible_cogit at 23:59|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)映画 | 政治経済

July 04, 2012

旅する夢ばかり視るので


  
  最近、旅をする夢ばかりを視ます。

  国内であったり、海外であったり、最近はなぜかロシアを旅していました。それも現実だったら絶対に乗らないであろう、アエロフロートではない、ロシアの知らない航空会社の飛行機でロシア中央部あたりの空港にものすごい勢いで着陸した緊張感が忘れられません。その後場面はとんで市内でタクシーに乗っているのですが、幸い運転手さんがフランス語をしゃべれて、なんとか行き先を告げようとして目が醒めました。

  そう、いつもどこに向かっているか分からないのですが、旅に出ています。

  ということで、旅をすることにしました。自分が勤務する会社には夏休み制度がなく、単に有給と代休の組み合わせで休めば、という非情な制度である一方、であるが故にいつでも「夏休み」と称して休んでいい、ということなので10月11日〜14日、韓国へいくことにしました。JALの航空チケットはマイルが貯まっているのでその一部消化で。マイルがJALPAKのツアーにも使えたらいいのに、と思います。

DSC_9255


  直近でソウルにいったのは去年の11月ですから、1年をあけず韓国へ渡ります。

  仕事でしょっちゅう行っている方には何を言っているか、と思われるでしょうが、僕にはとても大切なことなのです。どれほどこの日常で、韓国文化・人が僕の生活の潤いとなり、活力となり、生きる糧となっていることか。そして今度は、ハングルが読める、多少なりとも分かる状態での渡韓です。前回いけなかった戦争博物館にもいき、日本人として学んでこようと思います。

  10月の韓国旅行を胸に、がんばらにゃ、と思う次第であります。

DSC_9452





reversible_cogit at 23:10|この記事のURLComments(6)TrackBack(0)観光 | 政治経済

July 03, 2012

アメリカは何のつもりか――オスプレイ積載船が米国を出港



 米国海兵隊が所有する垂直離着陸機MV22オスプレイを載せた船が、米国から山口県岩国市を目指して出航したとのこと。はぁ?って感じだ。陸揚げ自体を認めないとする岩国市長、山口県知事はもちろん、配備が計画されている沖縄県知事、宜野湾市長も同機搬入を拒絶し、訓練の飛行ルートになっている和歌山県知事も拒否の声を上げている。それなのになぜ、出発できるのか。

 オスプレイは報道の通り、事故多発機であり、その原因も究明されていない。また、軍用機であるため航空法の埒外にあり、航空法で義務付けられているエンジンが止まっても揚力をつかって自力で着陸する機能、オートローテーション機能に欠陥があることが米国議会での証言、製造元のボーイング社も認めている。

 しかし民主党の藤村官房長官は、配備中止の申し入れをした共産党の志位委員長に対し同機に「オートローテーション機能はある」と詭弁を弄し、同時に沖縄や岩国に「感覚的な問題があることは十分承知している」(しんぶん赤旗で報道)とうそぶいた。原発爆発・再稼動と同じで、オスプレイの事故も原因究明はそっちのけで配備容認ありきであり、科学的な問題を「感覚的な問題」とさかさまに描いてみせるとことが、愚かな民主党政権の一人らしい。

 ことは沖縄、岩国に限った問題ではない。同欠陥機は東北で2ルート、北関東・信越、四国・和歌山、九州、奄美で各1ルートの低空飛行訓練を実施しようとしてる。その特性から「オスプレイ配備が、“日本防衛”とはなんの関係もない、海外への“殴りこみ”のための危険きわりないもの」(共産党の配備中止申し入れ文から)であり、事故を起こす可能性が極めて高い機体が、日本国内で海外侵略の訓練をするなどとは実におぞましい限りだ。

 これは単なる戦闘機の配備問題ではない。民主党政権の対米隷属外交において、米国のご機嫌取りが日本国民の生命財産より価値がある、と判断されているところに在る。自公はもちろん、アメリカ的リベラリズムの権化・みんなの党や維新の会が政権をとっても同じ判断を下したであろう。安保が大事が、日本国憲法が大切か。つねにこの問題に突き当たる。日本がデフォルト国家に陥る前に、まともな外交関係を築かねば永久に日本は米国に隷従することになる。



reversible_cogit at 22:46|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)政治経済 | 新聞

July 02, 2012

理知と情熱の人――ドキュメンタリー映画「死刑弁護人」




 安田好弘弁護士の名を記憶に刻んだのは、氏がオウム真理教・松本智津夫死刑囚を弁護中、経済事件で逮捕されたときでした。明らかに不自然で、国策逮捕ではないのか、いったいどうなっているのだ、と疑問に思いました。淡々と逮捕事実を伝えるNHKニュースの異様さは、映像さえ記憶しています。その後も、マスコミが描き出す安田弁護士の姿は、「光市母子殺害事件を通して死刑廃止運動をしている弁護士」というものでした。しかしそれにも、強い違和感を覚えました。「権力を疑え、マスメディアは都合のよい“編集”をする」という、自分自身に染み付いた感覚的なものからだったのですが。

 そんな安田弁護士を被写体としたドキュメンタリー映画、東海テレビ・ディレクターの齊藤潤一監督「死刑弁護人」を7月1日、ポレポレ東中野で観ました。会場は満席。


sikeibengonin



 くれぐれも念を押したいのは、「死刑廃止」という思想を押し付ける内容ではないということです。安田弁護士も、法廷闘争を通じて「死刑廃止」を訴えるなどいう愚行を否定しています。そして僕自身、この作品の素晴らしさ、安田弁護士という人間に魅せられたけれど、死刑の存廃に結論はでていません。しかしそれでも、「死刑廃止」、つまり人間の更生という可能性を信じて疑わず、同時に50数件の弁護を引き受け、そのどれにも真剣に向き合っている人物の姿は、「全身弁護人」(森達也氏)という言葉がふさわしく、スクリーンから目が離せませんでした。

 ぜひ実際に観ていただきたいのでこまごまとしたことを書くのはよしたいと思います。ただ、あのマスコミが鬼畜と描く林眞須美死刑囚が、いかに不合理なかたちで、もはや冤罪の可能性が高い中で殺人犯に仕立て上げられたかを知るのは、大きな価値観の転換でした。安田弁護士はあくまで理知的に現場分析をし、真実を追究し、そして誰よりも情熱をもって弁護に取り組むのです。「詐欺屋」である彼女と、だからこそ一銭の得にもならない殺人を彼女が犯すはずがない、という分析にも納得。今や林眞須美死刑囚を支援する人々までいることが大きな衝撃でした。

 この社会は、様々な構成要素で成り立っています。しかし、その趨勢は低きに流れる水の如くです。そうしたなか、安田弁護士という存在は際立ちます。その中身を、ぜひ皆さん自身で確かめて欲しいです。





reversible_cogit at 22:19|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)映画 | 政治経済

July 01, 2012

思いを馳せるのみ…  「重重 −中国に残された朝鮮人日本軍「慰安婦」の女性たち 安世鴻写真展」@新宿ニコンサロン



 その開催中止を週刊金曜日で知り、中止取り消し・開催をしんぶん赤旗で知った写真展、「重重 −中国に残された朝鮮人日本軍「慰安婦」の女性たち 安世鴻(안세홍、Ahn Sehong)写真展」へ足を運びました(7月9日まで開催)。

nikonsalon_ahnsehong


 当初、右翼団体の嫌がらせを嫌ったニコンサロンが開催を中止したのですが、安氏が東京地裁に会場使用の仮処分を申し立て、認められて開催決定にこぎつけたとのこと。ニコンが「政治活動の一環と知ったから中止した」と申し開きをしたのに対し、東京地裁は「たとえ政治活動の一環であっても、同サロンの「写真文化の向上」という趣意に合致していると判断したそうです(しんぶん赤旗12年6月29日・おはようニュース問答)。

 これまで何度もニコンサロンへは足を運んできましたが、初めて厳重な警備態勢、金属探知機の設置、かばんの中身確認などがされ、ものものしい雰囲気に驚きました。ただ実際、民族差別主義者が会場内で暴れたのでこうした対処がされたそうで、致し方なしですが、恥ずかしく、悲しい話です。

 ここでも何度も書きましたが、法的に日韓間で従軍「慰安婦」問題はまだ解決されていません。日本政府が「解決した」と言い張る論拠の日韓基本条約(1965年)では、同問題は俎上にさえ上っていなかったのです。また、「交渉の日本側責任者であった椎名悦三郎外相も、条約の成立後「両国の解釈が重大な点において違うというような場合」は「両国の当局者が協議をすることも起こりうる」(65年8月5日、衆院外務委員会)とのべています。「解決済み」だとして韓国側の要求を拒否するのは成り立ちません」(しんぶん赤旗11年12月26日・「主張」)。

 こうしたことを踏まえ、写真展に臨むことは、決して先入観云々ではなく、日本人として身につけておくべき認識の一つだと思います。でなければ、被写体となったハルモニたちの「孤独の中の死闘」(安氏)への理解は、ただただ遠のくばかりだと思います(もちろん、写真展を観たからといって理解した、などとたわ言をいうつもりは毛頭ありません)。

 作品のなかで彼女たちの笑顔をついに見ることはありませんでした。もちろん、安氏がいうように撮影のため幾度も通い、笑いも泣きもしたでしょう。しかし、どうしても作品として残すには違ったのかもしれません。中でも一番胸に響いた写真は、一人のハルモニが、彼女たちが暮らす中国、祖国の朝鮮半島、そして今の状況を生んだ日本が載った地図に手を当て、じっと見つめているものでした。どんな思いでその地図を見て、触れているのか…

 作品を鑑賞して、唯一自分を許せたのは「可哀相」などという感情が生まれなかったことです。彼女たちの生活は厳しく、もし日本軍の侵略がなければ故国でふつうの生活を送っていた確率が高いのです。そんな彼女たちに抱く思いは、ただただ日本人の一人として、たいへんおこがましいことですが、申し訳ない、取り返しがつかない、という思いです。たとえ読んでくれる人が多くなくても、ここにこうして書き、そうした歴史的事実があるのだと一人でも多くの日本人に知ってもらいたい。

 会場には韓国からの来場者の方が来ていて、入場時の厳重な検査に立腹していたようで、まったくもって道理です。恥ずかしながら東京都は、ソウル市とは違い、右翼で民族差別主義者の老害首長が居座っている(都民が選んでいる)ため、右翼の横暴をまかり通らせているのです。本来はあんな警備なく、多くの人々が足をもっと運ぶようにしなければならないのに。作品をしっかり脳裏に刻み、後送されてくるパンフレットを待ちたいと思います。



reversible_cogit at 20:57|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)政治経済 | 新聞