October 2009
October 31, 2009
寿命が縮むほど幸福な パトリシア・プティボン オペラ・アリア・コンサート オペラアリア with オーケストラ＠東京オペラシティコンサートホール
あぁ、キ・モ・チ・イィ〜〜
彼女の歌うアリアの一音一音が、脳の快楽中枢を押していくのが分かるくらいの陶酔を味わうことができました。どんなに高音でも、その艶やかさと輝きは増すばかり。きょう、東京オペラシティコンサートホールで開催された「パトリシア・プティボン オペラ・アリア・コンサート オペラアリア with オーケストラ」の前半最終曲、モーツァルト作曲オペラ『ポントの王ミトリダーテ』よりアスパージアのアリア“重い苦しみに”。ディヴィッド・レヴィ指揮、東京フィルハーモニー交響楽団の演奏です。
若き日のモーツァルト作曲ゆえの、久しぶりに聴く�爛癲璽張．襯叛甅畫干�のコロラトゥーラを駆使したアリア。その前に聴いたハイドンのオペラ『薬剤師』よりヴォルピーノのアリア “ご機嫌よう、親愛なるセンプローニア”での、ズボン役ならではのおどけた歌唱演技に、2ndVlのおねえさんがたも演奏しながら笑いをこらえるのに大変な様子。客演者が演奏していて、それをオケの方々が楽しそうに演奏している風景って本当にいい感じです。
パトリシア・プティボンを初めて知ったのはおよそ１年前くらいにNHKBSで初来日コンサートの録画放送を観たのが初めてでした。演技も楽しいチャーミングは歌いぶりにやられて以来、CDやYouTubeで楽しみ、きょうのコンサートを知るやチケット即買いでした。先の映像ではアーンの『クロリスに』を歌っていてもう夢中です。コンサートを通して曲想によってまったく違う歌唱を魅せてくれる。そしてきょうも前半後半で全く異なる、前半はモーツァルトとハイドンなど古典、そして後半はアメリカ20世紀音楽で構成されました。特筆すべきは前半でオケのみ演奏のリジェル作曲『交響曲第８番ト短調』第1楽章。いかにも古典な曲想で、ダーク・ロマンティカ。かっこよかったです。
そして後半、バーバーの『弦楽のためのアダージョ』から始まり、間断なしに『この輝く夜にきっと』。前者は『プラトーン』で有名ですが、『コンタクト』で少女エリーが亡くなったお父さんに向けて一人無線で話しかけるシーンが思い出されて胸に迫りました。そう、一時期はまっていたのですが20世紀アメリカ音楽は映画音楽の原点なのです。メロディアスな中に雄大な世界観に浸れるのです。続いて歌われたバクリ『3つのラブ・ソング』の３曲目、13世紀のペルシャ詩人Rumiの歌詞、
これが愛、これが愛、これが愛／神秘的な空に向かって飛ぶ／命から解放されて／これが愛、これが愛、これが愛／神秘的な空に向かって飛ぶ／手を伸ばし、胸の中で感じるために／胸の中で
が、手を伸ばしてもどうても届かぬものを希求する、哀切かつ強靭な旋律は、もう涙も鼻水も一斉解放にしてくれました。
そしてまたまた一変、爆裂的なバーンスタインの『キャンディード』序曲から、同1幕クネゴンデのソロ“着飾って、きらびやかに”ではキッチュな歌いっぷりで場内爆笑。またさらに叙情的なコープランドの『アパラチアの春』よりフィナーレ。そして有名なアーレン『虹の彼方に』。イッテ、泣いて、笑って、じんわり。こんな変化にとんだコンサートは生まれて初めてです。こんな思いをして寿命が縮んだかも知れません。アンコールを、指揮のレヴィがピアノ伴奏して、コール・ポッターの『Everytime,we say Good-bye』はおもむろに舞台に腰掛けて。最後まで夢見心地でした。
コンサート後、生まれて初めてその場でＣＤを買って（だってポイントつかないでしょ）サインの列に並んでしまいました。そして錆び付いたフランス語力から搾り出した彼女への言葉は、「Votre voix est merveilleuse, et a touchée mon coeur」。訳すと、貴女の（歌）声は奇跡的に美しく、僕の心を感動させます……。これ、言ったときはのぼせあがってなんとも思わなかったのですが、今思うとちょ〜〜〜キモイですよね。僕の語彙の基本が17世紀オペラに起因しています。恥ずかしすぎます。ただ、単にメルシー・ボクゥよりも気持ち悪くて彼女の印象に残っていれば本望です（笑）
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October 29, 2009
悲恋という永遠のモラトリアム 新城毅彦監督『僕の初恋をキミに捧ぐ』
きょうは突然に代休となり、映画と展覧会の2本立てとなりました。日差しは強いのにさらっと晴れないのは困ったものです。
新城毅彦監督『僕の初恋をキミに捧ぐ』を新宿バルト９で観ました。 なぜ純愛物語と死はセットなのでしょうか。この前提は、僕にとって作品を鑑賞しようとするのに大きな障害です。もしもドラマ『オトメン』で笑わせてくれている、岡田将生主演でなければ絶対に観なかったでしょう。今回も彼のナレーションが大きな核をなします。どんなに苛酷な台詞でも、それは淡々と。 幼い頃からずっと一緒の２人を分かつのは死のみ。否、死さえもその絆を断つことはできないと作品はいいます。しかし、主人公の友情や死生観への証しとして、彼らに絡んできた人間はあっけなく死んでしまいます。物語は主人公の死へと向かって、いかにその死が盛り上がるかだけに焦点が当てられます。生きる意味とか、大切な人を失う意味とか、台詞には登場するのですが、彼ら以外にその言葉はあまりに軽い。
主演の岡田、井上真央ほか、おしなべて出演者の演技はよく、脚本自体悪くないと思います。そういう意味では十分楽しめました。また撮影地である鎌倉って、本当にこうした物語にぴったりな街ですね。ふつうにしていて画になるから。山と海、歴史と風情をここまで兼ね備えた街はそうそうないと思います。また一目で東京女子大と分かる校舎も素敵でしたが、取り壊されると新聞で読んだので心配です。
そう、物語自体のテンポや雰囲気も、俳優の演技も十分に楽しめたのです。でも、なぜかこのもやもやは消えない。かつての「王子様とお姫様はいつまでも幸せに暮らしました」という幻想を否定するあまり、この手の物語は必ずどちらかが死ぬことが定石となってしまいました。しかし死とは、都合のいい記憶保管装置ではありません。ずっと付き合えば、暮らせば、恋も熱も醒めるからといわんばかり。その先の人間関係に思いが至らない現実がこの悲恋物語の基礎をなしています。
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国家分断ノススメ コノ国ヲイカスタメニ
18歳への選挙権引き下げを考える中で、どうしたら日本は活性化するのか考えざるをえません。まず厳然たる少子高齢化と借金財政です。この２点は、どの党が政権を執っても30年はかかる問題でしょう。では、それでもなんとかこの日本を持続可能なものにするか、どんな起爆剤が必要か、イデオロギーを超えて政治的に考えてみたいと思います。
まず、現況の閉塞をうみだした世代と、バブルの恩恵を知らない30代以下の世代では、決定的に価値観が違うということです。40代以上はバブルにうつつをぬかし、自民党政権を冷戦後も支持し続けました。本来、防共の砦としての日本は冷戦終結で価値を失い、米中の間で新たな道を模索しなければならなかったのに、変な自信をつけて目の前の軍事的国際貢献だのと短視的な問題にしか目を向けませんでした。その結果、アメリカのみに依存した輸出経済で内需はがたがたです。
つまり、世代間対立が政治の舞台で必要なのです。価値観も違うし責任の有無も違う。30代以下は40代以上の世代に1000兆円に迫ろうとする国地方合わせた負債の責任追及をすべきなのです。各世代の利益を代表した政党が国会でぶつかり合い、より良い妥協点を探らなければ世代間格差、不公平感が鮮明化しないがゆえにどろどろと、うやむやのままのこの国を腐らすでしょう。どうせ40代以上の人口は多いのですから、30代以下の利益代表は大胆に先鋭化してしかるべきです。
あともう一つの対立軸は都市部と地方です。先に挙げたこの国を瀕死の状態にしている借金地獄にしたのは、本来淘汰されるべき地方の無駄な事業を生きながらえさせ、土建自民の集票マシンとして稼動してきた実体なのです。同じくツケを払うべきは地方であり、都市部はその穴埋めをしなければならなくなりました。もちろん、地方が疲弊する一方では食料自給率はもちろん国全体が崩れますから、都市部が主導しつつ地方を生かす、こうした構図こそ民主主義的政治運営にほかなりません。
また、一票の格差は小選挙区制下でますます是正しにくくなり、人口が少ない地方出身議員が政界を牛耳る歪みを生み出しました。中選挙区制でも定数是正、あるいは比例代表制にしただけで、自民党は90年代、安定多数はおろか過半数にも満たなかったのです。それをさらに定数１にしたがために、余計に選挙権の平等化が困難になりました。今の民主党政権のごたごたは、都市部でも農村部でも民主党が勝ってしまった結果なのです。多党制・連立政権が維持され、都市色・地方色のつよい政治家が選出されることで、利益の明白な対立が生まれ、そこから新たな政治が展開するのです。
つまるところ、小選挙区制は毒を孕んだ独裁制にしかならないのです。時間は多少かかろうとも、中選挙区制、あるいは完全比例代表制の下での色あいが似通った政党同士の連立政権こそが、今後の日本を活性化させるあり方ではないかと考えます。世代間、地域間で国民の利益が対立するのは当然で、なのにそれをないことのようにするからおかしくなるのです。天下国家を論じるには良くない、と言われそうですが、地に足の着かない天下国家論こそ無意味です。利権政治とは次元の違う利益代表としての意志が、政治家には求められます。
October 28, 2009
少子高齢化のなかで絶対に必要な施策＝投票権18歳への引き下げ
この少子高齢化社会で今もっとも必要なのは投票権の18歳への引き下げです。そんな中、法務大臣の諮問機関・法制審議会がきょう、臨時総会を開いて「成人の年齢を20歳から18歳に引き下げるのが適当」とする意見を取りまとめ、千葉景子法務大臣に答申したそうです。
はっきりいってクレジットカードの契約云ねんの議論はどうでもいいです。ただ、選挙権を引き下げるならば同時に行うのが筋だとも考えます。政権を、あるいは政策を選択できるのだから金銭的な賢明な判断も出来る、とこうなりますかね。
今、日本の政策は明らかに若者や子ども向けではなくて高齢者向けの施策が目玉になっています。つまり、自ずと若者軽視の政策がまかり通り、将来へのつけまわしである国債を予算の半分以上も発行してやりくりしようとするのです。その象徴が自公の土建政治でした。
正直、敬老の日はやめろとまではいかないまでも、高齢者を公共施設で割り引くのはいかがなものか。一番時間に余裕があって、お金をもっているのが同層であるのは動かしがたい事実なのです。また現在、女性の４人に１人、男性の５人に１人が65歳以上。というか65歳って高齢者じゃないでしょ。昔のように長生きすること自体が価値ある時代ではないのです。
そんな今、若者は投票に行って積極的に10代、20代の意見を政治に反映させるようしなければ、もうただただ支払いと社会給付の差が１億円以上も多く払うだけの人生になってしまいます。若者だけに有利な政策を掲げる政党が出てきてもおかしくありません。外国ではありますし、地域政党と同じ考え方です（イタリアの北部同盟やカナダのブロック・ケベコワ）。
未見ですがWOWOWで「老人党」というドラマをやっていましたが、現実に必要なのは「若者党」です。もう老人は黙っていても強大な圧力団体に等しいのですから。18歳に選挙権を引き下げ、若者は自ら学び、考え、投票しなければ税金だけむしりとらえれる存在に堕することを真剣に考えたほうがいいでしょう。
October 27, 2009
「負」を認め、前進する勇気を 三菱重工に倣え
けさの日経掲載、26日に帝国ホテルで開催された第11回「日経フォーラム世界経営者会議」での発言要旨を読みました。そこで一番、感動し考えさせられたのは大宮英明三菱重工業社長の発言でした。驚き、胸に迫ります。
「三菱重工は総合力がある」といわれてきたが幻想だった――。航空宇宙事業部門はもちろん、伝統も規模においても日本を代表する重工会社社長のこの率直な発言に驚きました。「製品が700以上と多いにうえ、市場シェアも中位なため、市場での競争力が弱い」と自らの弱点を認めたのです。確かに、国内の競争相手がいない分野では強くても、今ほんとうに必要なのは需要も供給も大きなパイがある市場であり、新興国で売れるものが造れるかどうか。そこで中位というのは、痛い。
しかし現在の取り組みを知ると心強くなります。これまでの縦割りを排し、オーストラリアで受注した次世代型の発電プラント。「原動機部門の石炭ガス化発電技術と、機械・鉄構部門の二酸化炭素回収・貯蓄技術を組み合わせ、CO2排出を大幅に抑制する。世界初の大規模プラントで、当社の技術の結晶だ」。各種プラントは日揮、千代田工建、東洋エンジニアリング、IHI、荏原など日本企業の十八番といってもいい分野。ぜひ、力を奮って欲しいです。
「ものづくりは社会の利益実現のためになる。企業は志を持つべきだ。当社は世界で信頼され、世界が等しく繁栄する持続型社会の実現に向けて貢献する企業を目指し、たゆまぬ挑戦を続ける」。発言を読む限り、有言実行といっていいでしょう。特に縦割りの排除は、例えばソニーで実現したなら映像、半導体、カメラ、ゲームなどそれぞれの特化した技術が融合していない現状を大きく変えてくれるでしょう。
翻って鳩山民主党政権は温暖化ガス排出削減の高い目標を掲げ、景気回復、財政再建をぶち上げています。もちろん自公政権による「負」が重すぎるのは分かります。ならば民主党政権ならば出来ることから、しっかり実現しなければ（抜本的な日航再建もそう）。住友信託という勝ち組が中央三井信託と合併する時代。郵政改革の後退や、中小銀行イジメをやっていてはマネーの動きも滞り、外資は日本から逃避するでしょう。しっかり自らのこととして「負」を認め、取り組み前進を。
October 26, 2009
聖なる背徳の悦楽… 「THEハプスブルク」後編
前編の続きです。忘れてならないのはこの展覧会で来場者を出迎えるのが、「ハプスブルク家の肖像画」、ボヘミア王ルドルフ２世です。アルチンボルトをはじめ、芸術家や錬金術師のパトロンとしてチェコを今に続く芸術の都にしたのでした。いかにもな風貌。生涯に一度も結婚をされなかったそうです。
「イタリア絵画」で雄はやはりティツィアーノでしょう。ジョルジョーネの耽美な少年・青年よりも、「イル・ブラーヴォ」（＝暗殺者）の、隠した短剣を手にする男に声をかけられ、こちらを振り向く男性の既になんらかの覚悟をした人間の表情の鬼気迫る感覚は、隣の「イザベラ・デステ」に共通する衝撃的な強さをもっています。何分いても飽きませんでした。
同じく同コーナーで目を引いたのはバティステッロ「オリーブ山のキリスト」。この作品、主題はキリストとありますが、実体は美しい青年天使を描くための口実で、調べると他のバティステッロ作品も似たようなものでした。主題を離れてキリストがM男に見えます。パオロ・フィアミンゴは「黄金時代の愛」とか題していますが、大画面のあちらこちらで裸の男女が交接していますから、カタチを変えて春画は古今東西さまざまですね。
そして「ドイツ絵画」での衝撃は、きのう書いたデューラーではなく、クラナッハ「洗礼者ヨハネの首をもつサロメ」。もう、彼女の姿を一瞥してクラナッハと分かる特徴ある面立ち。しばらく身体が硬直して近づくことが出来ませんでした。遠めにもその幼児体型と冷徹と艶美をあわせもったそのサロメに、「あんたが大将！」などと興ざめな言葉が頭に浮かびました。
伏せた眼差しは寂寥か充溢なのか。真紅のヴェルベット地の帽子に白い羽飾り、透明な大理石の肌、黄金の編毛、広重をおもわせる青緑の空、金糸とダークグリーンのドレス…。意を決してちかづけば、人垣で見えなかった、今切り立てといわばかりの切り口が鮮血に染まったヨハネの首が目に飛び込んでくると同時に、あらゆる色彩の光彩がより燦然と。バティステッロにしろクラナッハにしろ、こうも背徳が聖書からの様々な主題をいいことに描かれていたのでした。おもしろすぎる。
最後のオランダ・コーナーでうなったのは、ネーデルラント風景画といえばロイスダール（ライスダール）、の二枚。鳥たちが舞う川辺の大画面と街と田舎を結ぶさびれた川辺の道を描いた小作品。アムステルダムの、海の近くのアムステルダムらしい雲（神奈川もそう）と空気感。明るさとはほど遠い、どこか陰鬱さを感じさせつつも安穏なやさしさに満ちる画面に、うっとりと見入りました。緊張感に満ちた作品の連続の最後、まさにデザートか。大混雑の中、充実した時間を経験できました。
鑑賞しながら聴いた曲です。オーストリア・バロック独特の音階が楽しめます。ザルツブルクの岩塩窟を思わせる冷たく硬い旋律。それ故に盛り上がれば、Pandolfiのイタリアの血と融合して恍惚な美しさ。
October 25, 2009
肖像画に視た蝋燭のほのほ 「THEハプスブルク」前編
彼女の前に立つと、そこには静謐な中に太く力強い、蝋燭の炎を視る思いがしました。ティツィアーノ『イザベッラ・デステ』。描かれてから500年近くの時を越えて、その相貌・姿から、芸術家たちを庇護した明晰さも、希求心も、矜持も、そして言いようのない澱みも、こうして我々の目の前に在る。キリスト教の、�狄�仰�瓩任呂覆��猝慄罩瓩�ら解放してくれるルネサンス的美を、一片の欠損もなしに。
きのう、東京・乃木坂の国立新美術館で12月14日まで開催されている「THE ハプスブルク〜華麗なる王家と美の巨匠たち」へ足を運びました。映画『REC２』と『沈まぬ太陽』鑑賞の間隙を使った２時間。かなり昔、同展の目玉となっている若き日のマリア・テレジアの肖像画は上野で見たことがあり、絵葉書も実家にあったのでそれほど期待していなかったのですが、が、やはり訪れてよかった。お目当てのデューラー「若いヴェネツィア女性の肖像」以外にも大いなる収穫があったのです。 展示構成はシンプル。神聖ローマ帝国、ハンガリー・オーストリア帝国支配下にあったウィーン美術史美術館、ブタペスト国立西洋美術館、オーストリア工芸美術館、国家家財管理局宮廷家財庫ウィーン家具博物館の収蔵品を、「ハプスブルク家の肖像画」「イタリア絵画」「ドイツ絵画」「スペイン絵画」「フランドル・オランダ絵画」などと順番に鑑賞することが出来ます。分かりやすい。ハプスブルク家で活躍したイタリア出身の作曲家、パンドルフィの「ヴァイオリンとクラヴサンのためのソナタ」を聞きながら鑑賞しました。
Violin Sonatas Opp. 3 & 4
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そして冒頭の作品は「イタリア絵画」コーナーで早速釘付けになった作品でした。前コーナー「ハプスブルク家の肖像画」で、絢爛たるエリザベートの大肖像画を前にして、その華やかで着飾った姿と比べ、表出してくる人間としてのエネルギーがまったく違うので驚きました。エリザベートに視える蝋燭のなんとか細いことか。ティツィアーノと単なる宮廷画家を比較してはいけませんが、やはり描かれる対象によっても違うはず。
「スペイン絵画」で展示、かのベラスケスが描いた幼いマルガリータ王女のそれは、彼女の自我無き故に、その画から感得できるのは世界観であり、彼女の威光たる背景。一方、「フランドル〜」で見られるファン・ダイクの肖像画は街の有力者それぞれを絶妙に美化し、威厳を与え、太い蝋燭を視せてくれる。画家の力量と描かれる対象によって、そこに視えるものがこうも違うのか、と。お目当てのデューラー作品も、市井の一女性を描きながら、その硬質な表情とたおやかなドレスの対象は見事さ。絵画に近づけば近づくほど輝きました。
October 24, 2009
真の意味で日航再建支援映画 若松節朗監督、山崎豊子原作、渡辺謙主演『沈まぬ太陽』
520人という数字にあまりぴんときていなかった。しかし休憩中、トイレから戻るとき新宿ピカデリー・スクリーン１の定員が580とあった。そうか、この劇場に入るに匹敵する人数か。ある男の子がお母さんに見送られて、「キッズVIP」のバッジを誇らしげに胸につけ、去年自分も一時期愛用していたロゴ入りの白い公式かばんを肩からかけ、羽田発伊丹行国民航空123便の搭乗口に走っていく……。
自分はこれまで、日航ジャンボ機墜落事故については少なからず考えてきたつもりでいた。けれど、あの男の子のカバンに気づいたとき、雷に打たれた。そうなんだ。自分も味わうあのわくわく感を奪うだけに留まらず、その死の瞬間まで想像を絶する恐怖を味あわせ、命を奪った挙げ句にその遺体さえ損壊せしめた。冒頭の事故シーンは正視できなかった。涙がとまらない。520の人生が。
若松節朗監督、山崎豊子原作、渡辺謙主演『沈まぬ太陽』を観た。17時30分から10分の休憩を入れて21時までの上映。園子温監督『愛のむきだし』以来の長編映画だった。同事故の真相はまだ分かっていない。けれど、大方の見方としては古い機体の、整備不良の積み重ねが招いたとされる。この事故を巡り、労組で委員長として活躍したがために就業差別を経験した恩地元（渡辺）を主人公に、副委員長として彼の活躍を妬む行天四郎（三浦友和）がやがて出世の鬼となり、御用組合をつくって組合を分断し、モラルハザードを起こしていく姿が対照的に描かれ、時間軸を交差させて織り込んでいく。そこには自民党ならぬ民自党と運輸省の利権あさりが絡み、今の日航の窮状がいかに醸成されていったかを、脚色を交えつつも描く。
この映画がなぜこの時期に公開かよくわかった。目下進行中の日航再建を阻むものではなくむしろ逆。政権が交代した今、さんざん日航の利権を私利私欲の打ち出の小槌として使ってきた自民の運輸族議員と運輸官僚を徹底的に排除するのは今しかない。今こそ大ナタをふるって、ナショナル・フラッグ・キャリアを再建する絶好の機会だから。あの、事故の犠牲となった男の子のように、日航機は常にみんなの笑顔の中心になければならない。この作品の中では、日航の闇の部分を集約して形作られたという行天に鉄槌が下るが、実際は違った。ならば今こそ、その時なのだ。
蛇足。数カ月前のキヤノン一眼レフEOSのCM撮影は、この映画のアフリカロケとのタイアップでした。
October 23, 2009
死と恋のアジール 冨永昌敬監督『パンドラの匣』＠テアトル新宿
冨永昌敬監督『パンドラの匣』＠テアトル新宿。前売りは買ったものの正直、期待していませんでした。『ヴィヨンの妻』は体質に合わず、冨永監督の『パビリオン山椒魚』のオサレ具合についていけなかったし。
しかし幸運とはこうして図らずも訪れるんですね。先日、WOWOWで観た『利休』以来で「あ〜〜おもしろい〜〜」と観ながら思えたのです。『利休』が利休と秀吉のせめぎあいの緊張感の心地よさだったのに対し、本作は不安がバッソ・コンティヌオとして響きつつもほんわか。一片の希望の尊さよ。 身体の弱い自分を「余計者」として戦時下で絶望し、結核になるがままだった少年（染谷将太）。が、突然の敗戦で生きることを「新しい男」として決め、山中の結核療養所ですごす。そこで�爐劼个雖瓩般症佞韻蕕譟�共に暮らす療養所仲間（窪塚洋介、ふかわりょう、小田豊ほか）や看護婦（今は看護師）との人間関係が描かれる。赴任してくる�狠櫃気鶚瓠弊郛緻け濃辧法�年の変わらないマア坊（仲里依紗）への複雑な思いがじんわり、なかば幻想的な映像で伝わってくる。
まず、退所した窪塚演じるつくし宛てにひばりが手紙を朗読するかたちのナレがこの物語を支配する。初めてその存在を知った染谷の声がいい。相貌はあどけない一方でバリトンでいい。そして演技もいい。というか、出演者みんなが素晴らしい。窪塚・ふかわの演技は久しぶりに観たけれど、これも味があってかみごたえばっちり。川上の飄々としたアンニュイさ、仲のいい意味で女の子らしい快活さは、本当に観ていてすがすがしい。わくわくする。そこにまた、絶妙にメロディアスでありつつ現代音楽の硬さをもった菊地成孔の音楽が、作品全体の諧調や空気感を整える。
結核療養所であるから死者が出る。しかし到底悲壮感とは距離を置いた世界だ。さながら戦後間もない下界からのアジール。そこでは文学が、詩が、確かな力をもっている。ただ、僕はその死を忘れられない。ひばりの母を、これまたつかみどころなく洞口依子が演じている。彼女を初めて知ったのは『マルサの女２』で、高校生ながら借金のかたに三國連太郎の愛人になり、すっぽりはまってしまう役。そんな彼女が子宮頸がんで死の淵を歩いたと知ったときはショックだった。そして、そんな彼女が療養所の外に控えていると思うと、緊張した。ほんわかな中の戦慄。情交寸前のひばりとマア坊を照らすのは明滅する電球。おもしろい。言葉も、映像も、音楽も豊饒。
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October 22, 2009
ブラックホール発生装置で国防を
先日、井の頭線にゆられながら何気なく読んだこの日経記事。よく考えると、すごいですよね。映画『天使と悪魔』の冒頭を思い出します。ふ〜〜ん。いろいろ応用できそうですよね。開発が進んで、報道されなくなったら本物。SFチックと思われますが、でも、たいていの技術はほんの少し前までSFでした。『天使と悪魔』に登場する大型ハドロン衝突型加速器だってしっかり実在していますし、日本でもSPring-8が稼動しています（用途がどう違うかは存じません）。
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そしてさらに連想するのが『ミスト』。ルドンやボスの絵画に描かれる異形のものたちが霧の中から現れるのですが、その原因が米軍の科学者が「異次元に窓を開けて覗いていたのが、なにかの事故で向こうとこちらがつながった」ため。そんなことあるわけないだろ、と多くの方は思うでしょうが、が、どうなんでしょう。別に「危険だから開発を中止せよ」とかキリスト教原理主義者のようには思いませんが。
いずれにせよ、これから少子高齢化する日本の国防を担うのは自衛隊という傭兵隊ではなくて、コンピュータや高度な技術・システムに任せるのが一番効率的ですし、戦争に伴って科学技術が発展するのだから一石二鳥。きょうの読売夕刊によれば、戦闘機のレーダー技術で三菱電機はアメリカに肩を並べているとのこと。そりゃ、HTVの人工知能も三菱電機。ステルス戦闘機の電波反射材はTDK製です。これにブラックホールを自由に発生させる技術を応用できるなら、かなり有力な兵器になるんじゃないですかね。十足くらい飛びな期待で、あくまで専守防衛で。
ブラックホール「超ミニ版」再現──阪大などの日中韓の研究チーム
2009/10/19配信（NIKKEI NET）
ブラックホール付近で出る強いエックス線放射を、高出力レーザーを使って地上で再現する実験に、大阪大学を中心とした日中韓の研究チームが成功した。強大な重力のため光さえも抜け出せなくなるブラックホール誕生の仕組み解明に役立つという。19日に英科学誌ネイチャー・フィジックス（電子版）に掲載される。
出力3000ｷﾞｶﾞ（ｷﾞｶﾞは10億）ﾜｯﾄの大型レーザー装置を使った。直径0.5ﾐﾘﾒｰﾄﾙの合成樹脂製の球に12方向から強力なレーザーをあてて10分の１に圧縮、セ氏１千万度、１億気圧の“超ミニブラックホール”を作った。すぐそばに置いたシリコン微粒子をレーザーで気体にすると、エックス線を観測することができた。
実験結果は白鳥座のブラックホールで観測されるエネルギーの信号と似た特徴を示した。藤岡慎介・助教は「ブラックホールが成長する仕組みの理論が正しいかどうか検証するのに役立つ」と話している。
October 21, 2009
�牴鯤�の物語�瓩箸靴討痢悒�トメン』
夜11時すぎ、仕事から帰っておいしい夜ご飯が食べられました。録画した『オトメン秋』を見させていただきました。毎回おもしろいのは当然なのですが、20日放送分はとりわけ。
主人公、正宗飛鳥の学校にキャピキャピが売りの、飛鳥母理事長の「オトメンを学園から炙り出せ」という密命を受けた家庭科の教師が赴任してくる。彼女はかつて「料理が出来ない、おしゃれじゃない、がさつで女の子らしくない」という理由で振られていた。 そんな彼女が外見と振る舞いを「女の子らしく、かわいらしく」見せることでモテモテになった反面、より男はそうしたもの、まさに逆�爛灰献侫．鵐肇ゥ奪騰瓩鮨箸鬚發辰瞳亳海掘▲皀討譴丱皀討襪曚秒棒�不審の塊になっている。一方、そんな彼女を利用しようというのが、やはり彼女も違う意味で男性不審の飛鳥母は先に述べたとおり。彼女は夫が「女になりたい」といって家を出た経験の傷が癒えないまま。故に、息子には過剰な男を求めている。
まず飛鳥は「女になりたい」わけではない。もし彼が「女になりたい」では、この物語の多様性は生まれないだろう。ただ、父は素性を隠しつつも既に少女漫画家の大御所として活躍している。だから決して父的存在をこの物語では否定していないし、とはいえ現実は別にして、漫画の世界は先進的であるからしてそれでは新しくない。そして、そうした存在では教師にしろ、母にしろ、彼女たちにカタルシスを齎しえない。
教師は、飛鳥をはじめとする「オトメン」たちを落とすつもりで合コンを開くものの彼女のこれまでの価値観が通じないことに愕然とする。そんな最中、かつて彼女を振った男と再会し、結局その男は彼女を、否、女性を、旧弊な既成概念で縛った歩くヴァギナとしてしか見ていないと気づく。そんな彼女に飛鳥が優しく語りかける言葉は、彼女を縛った価値観を見事に打ち砕く。こうした漫画やドラマが受けるのは、つまり今の女性が、男に媚びなければ出世はできないが、そんなことは望むことではない、という謂いだろう。
僕は原作を読んでいないので、この教師のように飛鳥母が解放されるのかどうかは知らない。けれど、それなくして飛鳥は飛鳥として生きていけないのだ。彼が都塚と真に相思相愛になるには、それこそが大きな関門なのかもしれない。いずれにせよ、この物語は女性にとって、男性にとって、キリスト教原理主義や家父長制といった旧弊な概念からの「解放のドラマ」だ。一昔前であれば、それはシュプレヒコールを上げる社会活動家が担ったが、今は『オトメン』。どちらが優れたコーディネーターか、いわずもがなだ。
October 20, 2009
支えているのは、やっぱり人 日航再建と整備士の皆さん
18日、久しぶりに写真撮影のため羽田へ。忙しすぎた友人が「飛行機写真撮影の禁断症状が出た」そうで。
本当に18日は秋晴れで、あたたか。少しガスっていましたが、心地よい外気をいっぱいに吸い込めました。そして撮影をして思ったのは、やはりどんなゴタゴタがあろうと、飛行機を飛ばす、ということのスゴイことと、それを現場で支える皆さんの矜持は否定できない、と。
子どもたち、若いカップルはもちろん、おじいさんおばあさんの仲良し二人組みが暗くなるまで離発着を眺めていたのはいい光景です。いつも飛行機は、笑顔の中心になければなりませんね。いよいよ日航再建策の骨子も固めなければならないでしょう。せっかく跳ね上がった株価が維持できるよう、期待します。
いよいよ攻めに転換、東芝本社
秋空に橋も伸び伸び
羽田新国際線ターミナルも間もなく完成
第１ターミナルのILLYカフェショップ
ANAのポケモンジェット
台場を背景に
大漁！
おそらく日本一の高さになる武蔵小杉マンション建築中
コブクロ・ジェット
葛西の向こうに気になる建設中建築物
夕闇迫りて
October 17, 2009
「航空会社は国力の象徴」。逆また真なり
「航空会社は国力の象徴」と指摘したのは先日、MXTV「5時に夢中！」で日航再建問題について問われたマツコデラックスさんのお言葉。この言葉を信じるなら、日本のフラッグ・キャリアである日本航空の株価は16日、上場来安値の100円をつけました。100円って…。しかし冷静に考えれば、０円でもおかしくないのが現況です。株とはそもそもそうしたものです。
と、いうことはこの日本は株価100円ってこと？そんなわけきゃないだろ！！と信じたいのが日本人ですが、90兆円の予算のうち、50兆円が借金と聞いて、先のたとえを笑えないのが現状です。生活費30万円で、18万円借金でやりくりしようものなら、１年後にはどうなるでしょうか。別に税収にはボーナスもないし。
さらにいうならば、「国と地方を合わせた長期債務残高は今年度末で８３０兆円近くに達する見通し」ということです。そう、なんらJALと変わらんのですよ、この国は。OBの年金で苦しむJALですが、老人だらけのこの国とどこが違うのか。無駄な路線を自民党政治のために採算度外視で飛ばされた姿は、無駄な道路、空港、港湾、ダムを造りまくった日本そのものです。
しかし日本国籍は株のように合法的に売ることが出来ません。ならば、我々国民の株主総会である選挙でどうしたかといえば、永く永くいすぎた経営陣をやめさせて替えたのです。ところが、高速料金無料化など、まだ新経営陣はことの重大さを認識せずにいるようです。政策の優先順位が見えないとはまさにこのこと。あとは戦争でもして、ハイパーインフレで借金の無効化しかないのか。それと同時に国民の資産もふっとびますが。一体、どうするんでしょう。
October 16, 2009
黒木瞳の気持ち悪いフランス語同様な CXドラマ『リアル・クローズ』第１話
録画しておいたCXドラマ『リアル・クローズ』を見ました。内容はまず平凡。黒木瞳演じる、パリでならした促販プロデューサーが、三越伊勢丹ホールディングスとJフロントリテイリング（大丸＋松坂屋）を足して２で割ったような設定のデパートに婦人服部門の部長として引き抜かれる。一方、パリ旅行での楽しみは食い気のみ、みたいな同百貨店のふとん売り場で活躍していた香里菜演じる売り子が、その根性を見込まれて婦人服売り場に配置換え。しかし本人は服なんて興味ない！と自分に言っているような女。しかしやがて部長に触発されてキレイに変わっていく、みたいなよくある話でした。
メガネとったらかわい子ちゃん、と、『プラダを着た悪魔』で、もしあの子がVOGUEで働き続けていたら、みたいな要素で出来てます。確かに部長の言葉のいちいちは正しいと思います。つまんない服を着ていたらつまんない人生になる、って。外見は内面の表れ。ただ、そんなのはルネサンスの時代から分かってますよ。今、まさにユニクロがブームなようなデフレ時代で、だからこそ、こうした意見は真実味を帯びるのだと思います。が、時代がバブルならばまったく逆でしょう。
みんな好きでデフレを生きているわけではないんですよね。そりゃ〜平均年収１６００万円弱のフジテレビの社員さんにとっては、デパートでばんばん服を買うことは当たり前のことでしょうが、俯瞰すると、そうした状況にはこの日本はないです。フジ社員さんのバブルは永遠でうらやましいです。先日、たまたま伊勢丹メンズ館に入ったのですが、ぼくのような貧乏人が入る場所ではないとつくづく感じました。あそこにいくと、本当に自分の貧困をこれでもかと感じさせられます。
つまりこの『リアル・クローズ』。なにやら時代へのアンチ・テーゼのつもりなんでしょうが、あの録音を一気に流しているような抑揚の無い黒木瞳の気持ちの悪いフランス語同様、どうかと思うお話です。結果も見えているし。結果が見えているお話に、これから２カ月も付き合うのはばかばかしいので見るのはやめました。時間の無駄ですし、自分とは無縁なお話でした。
October 15, 2009
観たくなけど、観なければ…
告白します。僕はJALが好きだ、好きだといっておきながら、実はJAL関連での保有株は双日が出資しているJALUXという商事部門社で、本体のJAL株主であることはとうの昔に利益を確定させ、さよならしていたのでした。JALUXも含み損はありますが、JALを持っていた場合の比ではありません。しかし。僕をJAL好きに塗り替えた友人は、しばらく1000株だったのに、知らない間に去年の業績回復時に2000株買い増していたそうです…。
僕にウォーレン・バフェットの投資方針を教えてくれたのは彼なのに！その業務を理解しているか、慢性的な借金経営ではないか、その業界で優位性のある分野を３つ持っているか。僕はそれに従って１年半前からちびちび株式積み立てを始めました（まさかJALUXじゃないですよ）。なのに当の本人は十二分にJALの経営状態から将来性の危うさまで認識しておきながら、不条理な行動をとったのです。そもそも、株は下がったら買うが基本です。ほんと、愛は非資本主義的です。
きょう、東証全面高の中、チェックはしているJAL株は10％以上値を下げて取り引きを終えました。特に材料が出たわけでもないのに、売り浴びせられるのをみていると、もうそれは言いようの無い喪失感に襲われました。時価総額は一体どれくらいになってしまったのか。そして、まさにこんな状況で、前原大臣の「JAL再建タスクフォース」の案が漏れ聴こえてくる真っ只中で、映画『沈まぬ太陽』が間もなく封切られます。脚色満載のドラマチックさで、御巣鷹事故当時のJALの内実を描いた小説が原作の作品です。
僕は未読ですがその友人は当然読んでいて、反省すべきは反省しなければ、といってます。が、国を挙げてJAL再建に向けて取り組んでいるのに（その真相さえ諸説紛々なのに）、国民に過剰な誤解を与え、計画を頓挫させるような映画を封切るなんて信じられません。でも、でも、僕は敵を知るためにも観たほうがいいんでしょうか。そしてもう一つ、気になるのが「幸福の科学」経典を映画化したという『仏陀再誕』。こちらはお金があるんですね。制作陣も声優陣も有名人ばかり。あらすじを読むと、なんてエセ仏教と思うのですが、やはり批判するには知らないと、と。すごいのは、挿入歌に指導という欄があって、そこにゴータマ・シダールタ、アポロン、エロス、ヘルメスってあるんですが。仏陀は実在したのかもしれませんが、アポロンって……マジ怖いっす（笑）
沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇 (新潮文庫)
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October 14, 2009
都民もですが、千葉県民も反省したほうがいい
自称有段者、がばれた釈明の図本当に嫌い、森田健作。また腹の中は大喜びで、怒っている振りをしていました。前原大臣の羽田ハブ化に対して。まさにウソと、自称と、ごまかしの塊。大昔、どんなドラマに出ていたかは知りませんが、そんなイメージに乗ってるてことは、まだウソの威を借りているということ。無所属を騙り、自民の支部長だったことを隠して知事に当選したのなんて序の口。
先日も、職員の不正が内部告発か何かでばれたとき、怒っている振りして腹の中で大笑い。なにしろ、不正は代々のことだし、自分の手柄になるだけですから。身内を批判して喜んでいられるのも今のうち。ましてや、成田空港がどういう現況かまったく把握していない。
成田空港は、明らかに自民党の失政の象徴です。農民を追い出し、その挙げ句にこの有り様。が、しかし。政権は交代しました。民主党政権だからこそ、自民党の責任とは一線を画し、このままでは仁川のいいようにやられてしまうアジアの拠点を取り戻さなければ。
そんな視点もない知事が、いくら怒っても関係ありません。千葉県は今や民主王国。県議会でも解散して、さらに民主の占有率を上げさせてしまえばいいのに。あんな知事を選んだツケを、千葉県民は払わなければなりません。都民もいっぱい払ってるよ、思いつき知事のせいで。
October 13, 2009
『HACHI』を観て涙を絞るなら…この作品を 飯田基晴監督『犬と猫と人間と』
僕の周囲で猫や犬を飼っている、否、一緒に暮らしている方々を見ていると、想像もできない�爛撻奪鉢瓩鬚瓩阿觚充造�あります。と同時に、尊敬するライターさんが何匹もの子猫を育てられていた時期の大変さは、ひとえにその方の愛情の深さなくして成立しないとも分かっているつもりでした。きのう取材帰りに観た飯田基晴監督、映画『犬と猫と人間と』は、それが確かに�爐弔發雖瓩世辰燭里世函△�み締めました。
この作品を知ったのはネットのニュースでした。しかとは覚えていませんが、この作品の制作経緯を紹介しつつ、日本のペット事情を批判したものだったと思います。なんだかそれだけ読むとムムムだったし、つらい映画を劇場でわざわざ観る必要は無い、と思っていました。けれども、なぜかきょうは勇気がもてたんですね。えいやっと。 ドキュメンタリー映画です。飯田監督が稲葉恵子さんという、あるおばあさんから資金提供の申し出と、依頼を受けての撮影開始でした。猫や犬の現状を伝えて欲しい、と。そして監督の敢えてそうしたであろう、淡々としたナレーションのもと、捨てられる犬猫の現状が網羅的に映し出されるのでした。以前、ETV特集でみた多摩川河川敷の猫とホームレスの方々を撮り続けている写真家・小西修さんも登場されてました。動物愛護センター、民間施設の皆さん、そして英国の活動家も。
とにかくひどい。愕然とします。１日1000匹が殺傷処分されてる犬猫たち。２％弱の関門をくぐって、運よく愛護センターで引き取られる犬はおとなしい子たち。吠えたり、気の荒い犬は…。けれど、なんで彼らがそうなったかは人間の責務によるところなのです。生活保護を受けるために犬２匹と離れざるを得なかった方の涙と、その２匹が性格のよさからすぐに貰い手がみつかるのは等価なんですね。猫は多いので即、処分。ガス室待ちの、彼らの姿が忘れられません。あんなに愛し、愛を受けていたと思っていたのに、なぜ僕は、私はここにいるの？って。その愛さえ、知らない目も開かない子猫たち。
作品として、偏見を排したつくりもすごいと思います。保護する人、預けざるを得なかった人、�狃菠��瓩垢訖諭�避妊手術をする人、依頼する人。様々な人間たちの思いや行動が撮られているのと同じだけ、犬や猫たちは言葉は無くても表情や行動でいかんなく語ります。喜怒哀楽そのままに。予告編を観て僕はどん引きしたけれど、世間的には大ヒットした『HACHI』を観た皆さんは、この作品もぜひ観て欲しいと思います。そうすれば、日本は確実に変わります。
October 12, 2009
October 11, 2009
ホンネが聞きたいです、松さん 根岸吉太郎監督『ヴィヨンの妻桜桃とタンポポ』
太宰治原作、根岸吉太郎監督『ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ』をきのう、CEATEC2009の帰りしな、新宿ピカデリーで観ました。先日、フェイク・ドキュメンタリーの巨匠、というにはまだ若い白石晃士監督のブログで絶賛・言及されていた、手塚眞監督『白痴』（1999）のDVDをどうしても手元においておきたくて（劇場で観た衝撃の記憶が、まだまざまざと…）購入してしまったつながり、浅野忠信出演つながりで観てしまいました。
総括すれば、松たか子さんをみるための映画、ということです。まぁ、太宰のよさを僕は理解できないということです。あとは広末涼子のメガネがいい！！という方にも。浅野さんはいつもの通りです。妻夫木聡もいつもと同じ。ただ、浅野さんにしたらこうした不誠実極まりない役どころは少ないのでよかったか。妻夫木は、なんだか『約三十の嘘』とかぶる役どころ。室井滋＆伊武雅刀の小料理屋夫妻の味がなければ苦しかった。山本未來さんの銀座のママさんは素敵でした。鈴木卓爾監督の作家（？）も一瞬でしたが説得力ある。そういえば堤真一さんも。彼もいつもとおんなじ。
物語は、酒にも、女にも、金にも甲斐性の無い小説家が、とってもとっても奥さんに迷惑をかける話です（こんな単純化したらすんごく怒られそう）。上映後、銀髪のおばあさまがご友人らしき方に「なんの目的もなく生きてて…」と憤慨気味に話されていたのが印象的です。ご本人が働かれていたかは分かりませんが、すくなくともご主人は食べていくのに困るどころか、ステータスをその奥様に約束した生活を送らせているのでしょう。
この映画がモンレアルの映画祭で最優秀監督賞をとったそうですが、なんだかいかにも欧米の人にこのまれそうな破局とぞっとするようなハートフルがごちゃごちゃになったお話です。浅野演じる大谷が、妻を評して「水がひくきに流れるような、だるい従順さ」といっていて、フランス語圏の男には、そんないもしないような女が理想なんでしょうか。それとも、ああした文学者像がいいんでしょうか。松さんは「幸せは人それぞれ」とかいっているようですが、自分の夫がああだったら絶対に離婚するだろうに。
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October 10, 2009
気炎吐く東芝 CEATEC 2009
きょう、幕張メッセで開催された国内最大のIT・エレクトロニクス総合展「CEATEC 2009」に足を運びました。開催最終日は入場無料となり、大勢のお客さんでごったがえしていました。
総合的な印象としては、先日も書いたソニーに関して3DTVという?新製品?はありましたがやはりがっかり。まだ専用めがねが必要なのに、切り札になるとは思えません。ただVAIO新シリーズは期待ですが、これも国内市場に限ってのお話。
一方、ネットブックでエイサーやアスースを抑えて市場１位となった東芝の新しい液晶テレビ、CELL REGZAの新機能（録画していなくても当日の番組をさかのぼって視聴できる、高い音質など）は非常に魅力的です（高価ですが）。東芝は日本一の半導体設計生産企業ですが、PCにしろTVにしろ、半導体を使っての高性能化という一本貫かれる方針が、早晩開花するのではと期待します。HD-DVDから撤退した東芝が、唯一欠けていた「Blu-ray」を登載するPC発売も間近。「選択と集中」の成果が楽しみです。
以下、いくつかブースをご紹介します。
NEC、日立も撤退したスパコンを日本で唯一開発を進めている富士通。この巨大シリコンウェハーが、今後スパコンに組み込まれるそうです。クラウドコンピューティングも重要な課題です。
三菱電機の宇宙事業「SOLARBIRD」システムの紹介。最も効率的な太陽光発電の姿です。先日打ち上げられたHTVの自動制御システムも三菱電機製。
Blu-rayもHDDも登載の新製品。東大の学生さんたちに、解説員のかたが熱を入れて語っていました。そして、その大きさでギネスブックに記載されたダイアモンド・ヴィジョン。
シャープ・グリーンフロント堺とLED登載TVの紹介です。液晶パネル・太陽光パネル生産にかかわる企業が横断的に一カ所集中し。省エネルギー・排出CO2低減化を図る、先日始動したばかりの巨大施設。これでサムスンに対抗します。
dts社とQテックのブース。放送・エンタメ業界に必要不可欠な二社です。
October 09, 2009
カツマ×リカのAERA対談を読んで
友人が今週のAERAに掲載されている「勝間和代×香山リカ対談」を読んで、「カツマさんがお母さんだったら大変だ」といった旨をつぶやいていたので、気になって読んでみました。
さて、両先生の対談を読んで感じたのはカルチャー・ショックです。耳に入ってくる「カツマー」という意味は知っていましたが、確かに出す本、出す本、ベストセラーになるのですから、「幸福の科学」には及ばなくとも、信奉者はたくさんいるはず。現に、映画鑑賞仲間のカックイイお母さんたちは、勝間さん主宰のムギ畑のお仲間です。マイミクの皆さんがそうかは別にして、それだけ多くの人が「自己啓発本」を買って、読んでいるということなのです。
で、その反動として香山先生の本も売れている、という構図。つまり、かなりの割合で勝間本と香山本の読者は移行期を経てかぶる、というのがAERAの見立てとなっていました。本当に皆さん、向上心があり、心が広いです。そもそも、スーパー優秀な勝間さんをまねようというのがすごい。中等部から慶応、学部生で公認会計士合格、JPモルガン・チェースの元証券アナリストですよ！！僕なんか死んでも無理、とあきらめますが、範としようとするからすごい。
N.Y.のJPモルガン・チェース本社 20090901撮影
人は、自分で決定していると思っていても、生まれや社会関係の中で自ずと選択肢は決まっていて、その中から僅かな自由意志や自らの社会的政治力（学力など）で選択している、というのが実社会でしょう。そう、黙っていても社会という他者の集団のいいなりなのに、さらにお金を払って他者の意見を受け入れて、実践するなんて、僕のようなわがままで忍耐力のない人間には不可能です。自己啓発本を買うお金もないや。
さらに、お二人の話題の中心に「利他的な行動をとる」ことの要因や意味が話題になっていたのですが、お二人の共通認識として利他的行動自体の肯定です。勝間先生の仰ることを要約するなら、「情けは人の為ならず」ということ。だから実践せよ、と。ここで一番思うのは、そうか、自己啓発本とは、自我を呼び覚ます本ではなくて、他者に望まれる存在になるための指南書なんだと。そうすれば自ずと勝ち組に慣れるよ、と。なるほど、だから僕は永遠の負け組みで貧乏なのだと、納得した秋の寂しい夜です。
October 08, 2009
愛ゆえの、この ―若冲賛― 御即位20年記念特別展「皇室の名宝―日本美の華― １期：永徳、若冲から大観、松園まで」＠東京国立博物館平成館
人口に膾炙した作品について、いまさら自分ごときが何をかを書けるとは思えません。けれど、それでもきょうの思いを残さずにはいられないのです。今までも何度か見てきた伊藤若冲の作品。時に画は、その描かれる世界に身を置く想像が楽しいけれど、若冲の画面はもうそれ自体で「異界」であり、寄り付きがたい魅力。しかし、そうした表層の向こうの、あることに思い至ったとき、公衆の面前で滂沱の涙でした…
台風の間隙を突け、ということで事前に許可をとって、東京国立博物館平成館で開催中の、御即位20年記念特別展「皇室の名宝―日本美の華―」に行ってきました。今は11月３日までの「１期：永徳、若冲から大観、松園まで」。宮内庁所管の三の丸尚蔵館収蔵品を中心の展観です。
大混雑の銀座線を降り、東博に向か道すがら、空には北へと移動していく暗雲と、急速に流れていく白いちぎれた雲の数々と青く、高い秋空のコントラスト。夢中でケータイで写真を撮っていました。会場は、メディア内覧会でさえ大混雑だったと聞くに、非常にすいていました。
「名宝展」ですから、見どころは若冲(1716−1800)に限りません。しかし、いちいちを書くのはやめます。すべて軸の『動植綵絵』30幅で、体力も気力も尽き果てたのが実際ですし。まず釘付けになったのが「雪中錦鶏図」。枝の緑と、そこに半ば凍りかけたような、溶けかけたような粘性ある雪の白（他の作品でも若冲の雪はこうです）、そして錦鶏の赤を中心とした極彩色。錦鶏の見上げる視線の力強さ、この白、赤、緑というインパクト、さらに近づけば左下の咲く桃色がかった椿の、なんとたおやかな花弁とその色。視覚のオペラです。
「雪中鴛鴦図」や「芦鵞図」の構図の大胆さ、「紫陽花雄鶏図」における紫陽花の紺色と白の花弁の鮮烈さ、いずれも完璧な描写と美しさです。しかしそれだけではない。いっぱいの南天の下、黒い羽根に真っ赤な鶏冠が鮮烈な印象の雄鶏が、凛とポーズをキメている「南天雄鶏図」。が、主人公・雄鶏の後景に一羽、小鳥がその南天を一粒ついばんでいる！「僕は知らないよ〜」と無関心に。また「群鶴図」でも、鶏たちがみな完璧な構図に収まっているのに、一羽だけ「たるい〜」と言いたげな半眼の一羽に気付いて可笑しくなり、なんだこのユーモアは、と……。なぜにここまで完璧に美しく、かつ可愛らしく描けるのか。
そう、酒井抱一が犬を、円山応挙が猫（虎図）をかわいらしく描くように、若冲は鳥が大好きだったに違いない。溢れる愛情なくして、雄鶏をセックスシンボルのように描きはしないだろうし、無垢な小鳥の愛らしさは画力以上ではないだろうか。おどける雌鳥を、守るかのような雄鶏の頼もしい表情と仕草。その圧倒的な愛（あるいは執着）に気づいたとき、脳内ですべてがつながり（それが完璧に錯覚としても）、感情の堰が決壊したのでした。奇想とか、ずば抜けた画力とか、そうした概念では理解できない、愛ゆえのこの世界…
そうした感情の起伏には、見ながらきいているモンテヴェルディの「Ohime chio cado」（「私は倒れてしまいそう」）から始まる声楽曲集「Arie e Lamenti」の効果も大だったと思います。あり余る感情を抑制したかのような、緊張感と甘美がないまぜになった響き。泣き疲れて、ぼ〜としながら上野駅に向かうと、行きでは気づかなかった銀杏のむせ返るような臭いが気付け薬になってくれました。
October 07, 2009
CEATEC報道にみる危機感格差編集する 日経と、ほか商業紙
国内最大のIT・エレクトロニクス総合展「CEATEC 2009」が幕張メッセで開催中です。最終日の10日に行く予定なのですが、もう本当に楽しみです。去年も足を運びました。しかし今年はビクターやパイオニアが出展しないのは納得できますが、NECまで独自出展していないと日経社説で知りました。去年の展示では衛星や海底ケーブルがあって、「通信のNEC」と再認識して感動したのに。
しかし、こんなお祭り気分を覚ましてくれる記事がけさの日経に掲載されました。「CEATEC」を伝える写真（シャープの3DTV）付きの記事の右には大きく、韓国サムスン電子のLED（発光ダイオード）登載TVの1000万台生産を目指す記事が目に飛び込んできます。この１年でLEDテレビ市場の主導権をサムスンは手中に収め、数週間前にドイツの見本市「IFA」を伝えるWBSのニュースでも、「欲しいものは」という問いに、皆が口をそろえて「サムスンの×××」という具合。低価格と、日本製品ほどではないけれど高機能な各種電気製品で、サムスンはがっちり消費者の心を掴んでいるのです。
一方、日経記事が指摘するのはソニーの失敗です。なんでも先進のソニー、LEDテレビで先行したものの、サムスンのLEDテレビ増産への一点資本投下という戦術に敗れたのです。いくら技術があっても、多数に使ってもらわないければ意味が無い。日本製携帯電話のガラパゴス化は、携帯に限ったことではありませんでした。サムスンは、携帯でも、LEDでも、半導体でも、大きく日本メーカーを突き放し世界で愛されています。サムスンの社長が「IFA」で、「これからも我々はナンバー１であり続ける」と笑いながら豪語していましたが、悔しいですが言行一致なのです。
と、職場でとっている毎日、読売、そしてネットでみる朝日の「CEATEC」記事は、なんと安直で、お祭り気分なのか。ムラタセイサク君とセイコちゃんは非常に重要ですが、また3DTVもおもしろいですが、今、まさにこの世界的不況の中で売れるものはなんなのか、日本エレクトロニクス産業はどう進むべきかが伝わってこないのです。日本の技術が優れているのは当たり前。でなければ、とうに国債漬けの極貧国です。しかし今、韓国、中国、そして台湾という他のアジア各国のIT攻勢に守りに入っているようでは21世紀の日本は、ほんとうに極東の、老人だらけの極貧国になりかねません。経済の分からない記者が書く経済記事は百害あって一利なしです。
お話を聴き、今までの言動を見る限り素晴らしい働きをされている直嶋経済産業大臣は（失礼ながら想像を遥かに超えて期待してます）、既に足を運ばれたでしょうか。新政権として、改めて日本を科学技術立国に押し立てるための政策に取り組んでもらいたいものです。それこそ、温暖化ガス削減の近道でもあるのですから。
October 05, 2009
政治とは、再起復活の物語でもある、はずなのに
日曜日朝10時、テレビをつけていきなりNHKのアナウンサーが読んだニュースが、中川昭一元財務大臣の訃報でした。あってはならないことはいくつもありますが、これもその一つ。
さっき録画しておいて見た月曜日「５時に夢中！」で、デラックスマツコさんがショックを隠しきれず、「批判を覚悟で告白しますが、当選２期目の中川さんで自慰行為をしました！あの目が、あの闇を湛えた目が大好きだった」。マツコさんの石原慎太郎批判ほど的を射ているのもないですが、同じタカ派でも、恋心は政治を超えるんだとそれも驚きです。否、同じタカ派でも決定的に違うか。まったく違う。
僕はといえば、もともと中川氏のことはタカ派ゆえに嫌いでした。当然ながら。しかし、ここにも以前書きましたが、Ｇ20から帰国した足でWBSに出演し、財務大臣としての見解を聴いた時、あ！久しぶりに金融がわかっている大臣が誕生した！と小躍りしたのをまざまざと覚えています。かつ財務大臣になった途端、タカ派的発言を控える、という態度も信頼できました（政治家とは、そういうものでなければならない）。それもそのはず。二世議員とはいえ、東大卒の興銀出身（現みずほコーポレート銀）。そこに突然、父の自殺を受けての立候補だったのです。マツコさんがいう、闇とは安直に想像すればその出発点以外、なにものでもないでしょう。
故にあの�爐發Δ蹐Σ餮��瓩法∈能號佑肋�渕元総理を思い出し健康を心配し、真相を知ってがっかりしました。世界にあの放送が配信されたということ自体が国辱ですし、ご本人はどう感じていたかは分かりませんが。辞めるなら、あの時やめて坊主にでもなれば許されたかもしれない。でも、それを許さないプライドの持ち主でもあったのでしょう。CXで落選後に放送されたドキュメントで、選挙区周りをしていても手を後ろで組み、やあやあ、と腰を折ることなど考えもつかないような姿だったのは、それが中川氏の良くも悪くもひととなりだったのだ、と。
自殺でなくとも、睡眠薬とお酒を一緒に飲めばどうなるかなんて、分かっていたはず。以前、朝日新聞の早野透コラムニストが執筆されていた「ポリティカにっぽん」で、社民党の辻元さんや民主党の山本譲司さん（前者は議員に復活。後者は汚職で辞職、刑務所で知的障害のある受刑者の劣悪な扱いに接し、出所後は福祉活動に従事。僕も朝日本社で開催された講演会でお話を聴きました）の例を挙げ、政治家とは、過ちを悔い改め、そしてそこから再び復活するもの、それ故にできる何かがあると書かれていた文章が忘れられません。娘さんは社会人で、息子さんは高校生とのこと…。いま、こうして書いていてもため息ばかりです。
October 04, 2009
異界は常に裡なるもの 東京藝術大学大学美術館「異界の風景―東京藝大油画科の現在と美術資料―」
きのう、上野の東京藝術大学大学美術館で開催中の「異界の風景―東京藝大油画科の現在と美術資料―」展にいってきました。
結果的には、期待していたわりには総合点として、あんまりでした。絹谷幸二とか好きじゃないし。でも、もちろん足を運んだ甲斐もありました。収蔵品展示で浅井忠（1856-1907）の作品のずば抜け感。小品が多いのですが、その凝縮された画面から立ち昇るオーラは、周囲の、何倍もの大きさの作品を圧倒していました。
そして大西博藝大絵画科准教授の作品と言葉は、胸に落ちました。「中国の磁器には 空の色があらわされているという。器を天目ともかく。天空の青、白雲の白、夕暮れの暮色。その刻々と変わる「色」に人々は自然を仰ぎ、遥かなる憧憬をおぼえる。」この言葉が付された作品は、白い大きな壁面に四角い小さめの窓があり、そこから板谷波山の器が見える。その色はまさに「天空の青、白雲の白、夕暮れの暮色」。器は見せ方によって、こうした魅力ももちうるのか、と。
展示冒頭に、司馬江漢の作品があるのが印象的でした。確かに彼の描く絵画は、どこかしら現実離れした雰囲気をもっています。奇抜な情景を描いて「異界」と称するより、よくある、あるいは自然に出来た奇観を描かれたのを見て、誘われる経験のほうがリアルでしょう。ただ、異界といえば美術館の外にも。かつて、ホームレスの居住地だった場所を整備し、公園にし、そこに布を野外に展示したインスタレーション。そこにいた人は排除され、人工的な空間で子どもや犬が憩う。異界など、いつでもどこでもそこらで口をあけているのです。�牋朿Ν瓩箸蓮⊂錣卜�なるものと考えます。
October 03, 2009
価値観の共有、総理と首長の違い オリンピック招致失敗を考える
2016年のオリンピック開催がブラジルに決まりました。北京開催の記憶が新しい中で、BRICsという概念の新たな段階を示唆することになるでしょう。実際、ブラジル経済の復調は顕著。それでもまだまだ貧富の差は大きく、今後その貧富の差を埋めていく政策が着実に実行されるなら、もちろん紆余曲折はあるにせよ新興国の?新?の冠がとれる日も見えてくるのではないでしょうか。個人的にも、２年前にHSBCブラジルオープンを買った身としてはほっとしています。
さて、一体なぜ東京が敗退したかを考えねばなりません。否、なんで東京は立候補したのか、正確にいえば、なんで石原慎太郎都知事は決断したのか。そこには明らかに、石原個人の失政隠しの意図があるのです。まず、新銀行東京のいまでも脹らみ続ける負債1000億円超の問題、さらには銀行への一方的な外形標準課税の導入と裁判での敗訴、さらにはいっこうに進まない築地市場移転をオリンピックにかこつけようとしたこと。
こうして見ると、ヴァカな都民はトップダウンを愛して石原に２００万票も投じたのでしょうが、彼の決断のことごとくが失敗し、今回のPR費＝都税の損失１００億円は氷山の一角で、思いつきと独断の政策によってどれだけ都民の税金が無駄に使われたか計り知れません。今回の五輪の最大の敗因も、独断の結果、都民とのコンセンサスがなかったことに尽きるのではないでしょうか。第一生命経済研究所の永濱利廣主任エコノミストが指摘するように、もしも開催が決定したならそれなりの景気浮揚は見込めたはず。しかし都民は、もう石原祭りの神輿を放り投げたのです。
思うに、同じリーダーでも総理と首長はやはり違う。どう考えても、鳩山総理と国民との価値観の共有は望めません。が、国政を動かすということはあるいはそれでも、逆にそのほうがいいのか知れない。つまりは政治を俯瞰し、歴史の時間軸の中で政策を構想できるかにかかっていると思います（温暖化ガス削減目標もそう）。一方で首長は違う。やはり地方自治体とは、より住民生活に密着したサービス体系を維持することが第一義であって、住民との価値観共有が不可欠でしょう。いくら予算が多くても、国の真似事をしてはいけなかった。もはや石原氏に望むことは都民にはないはず。敗残の将は去るのみ。
October 02, 2009
October 01, 2009
映画『ミスト』は、レトリックではない
あなたはフランク・ダラボン監督、スティーブン・キング原作『ミスト』を観ただろうか。もし彼らの作品、『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』を観て、少しでも心が動いたのなら、絶対に『ミスト』を観るべきだ。
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ここで同作について書くのは３度目か。観たのも３度目。先日、WOWOWで放送されたのを録画して今観終わったのだけれど、動悸が収まらない。きっと、しばらく置いて４度目を観ても、何かしらを発見し、恐怖し、この作品の途方もない意味をかみ締めることだろう。
この作品のテーマはと自らに問えば、それは人間そのもの、というしかない。そして、この世界に解はない、と。もちろん状況は一見して特異だ。嵐の翌朝、湖のほとりの田舎町が霧に包まれる。そして、その霧の中から現れるのは、ヒエロニムス・ボッシュが描いた魔物と見まごう生命体たち。
展開するのは、スーパーマーケットに閉じ込められた人間たちの動向だ。地元民、ニューヨークから休日を過ごす者、知的水準の高い者、高くない者、狂信者に無神論者、市民に軍人、大人に子ども、冷静なもの怯える者、そして生きる者、死ぬ者。人間のあらゆる可能性がここで試される。
しかし、これは�爛譽肇螢奪��瓩留撚茲任呂覆ぁ�ここで描かれる狂信者は実際にいるではないか。神と話せると自分で自分を信じ込ませ、自分の「力」を公言し、周りを巻き込み、すべてを「神」とそれに起因する災厄に帰結させる。９・11後のアメリカがその最たるものだった。
ラスト数分前、諦めと、恐怖とが入り混じった人間たちの頭上はるか上にその巨体をもつ、ブロントサウルスのボッシュ版のような怪物の幻想的な美しさ。�猗��瓩箸いΔ發里�、鮮烈な色であったり、黄金比だけでは計り知れないと示す、この映画の白眉のシーンだ。圧倒的な美はファシズムで心地よいと浅田彰氏は指摘したが、あの圧倒的な存在はまさに。
本当に恐ろしい作品だ。怪物や、それに襲わる犠牲者の描写以上に、人間のなんたるかを突きつけられるからだ。自分があの場にいて、冷静な主人公たちの一人と考えるのは自分を買いかぶっている、ぞと思う。醜の、美の、概念そのものを強烈に問う。観ていない方は、ぜひ。何度でも観て、この濃密な映画をかみ締め、ナマの生活を生きよう。
